sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

たけみた先生の翻訳によるルーマン『行政学における機能概念』を読んだよ!

id:takemita先生によるルーマン私訳シリーズ『行政学における機能概念』を読みました。こちらは、内容よりも文章がとっても難しいことで有名な社会学者、でありながら、やたらと言及されまくっていて「なんか読まなきゃいけないんじゃないか」と思わせられる社会学者であるところの二クラス・ルーマン大先生によるデビュー論文なんだって。デビュー作にはすべてが宿る、なんていうのは、ジンクスかと思っていたんですが、このデビュー作は結構難しい。後々の難しい感じがこの時点ですでに感じられ、さながらピンチョンが『V.』でデビューしたときのよう。やはり最初からルーマンルーマンであったのか……と思いました。有識者によれば「後期ルーマンで悩むより、初期ルーマンをたくさん読んだほうがルーマン理解は深まる」とのことでしたけれども、いきなりコレはちょっとハードかも。訳文からはわかりやすい日本語に訳そうという感じのプロジェクト杉田玄白っぽい感触が伝わってくるんですが、その感触からスピーディな感じで読み進めるとまったく頭に入ってこない。これは素敵なライフハック……じゃない。でも、面白かったです。見なれない論理学や、数学の用語系を乗り越えると吉。よーく読むと、なるほど社会システム論はこういうことを言い換えたものだったのかな〜、とか思ったりする。


さて、この論文の内容について軽く触れておきたいと思うのですが、一言で言ってしまうと「タイトルどおり」っていうことになります。「機能/関数(Funktion)」という概念をつかって何を論じるか、についてのお話。「機能っていう言葉の使い方が人によってバラバラだから、ここでひとつまとめようぜ」という問題を扱っている。そこでは、それまでに「機能」という言葉を使って何が表現されてきたのか、にも触れられるのだが「機能って言うとなんか上手いこと言った風になる」ってだけで何の意味もなかったりするよな(『文学的効果』)などと批判的だ。


それでは、この論文でルーマンは「機能概念」をどう定義するのか。「機能の機能」とはなんなのか。ルーマンの結論から触れておくと「パースペクティヴをひとつ定め、それを参照点として、複数の可能性のあいだの交換を統制すること」だ、ということになる。はい、これだけだと何言ってるかわからない。ルーマンがあげる具体例は以下。

A嬢はもちろん比類のない存在であるが、速記タイピストとしての機能においては、彼女のかわりに別の女性を採用することもできるし、部分的には録音機で代用することもできる。

Aさんは世界にひとつだけの花けど、他にもタイピストはいるぞ。タイピストとしてはAさんは、Bさんと機能的に等価なのだ、ということができるよね、と。だから、Aさんのタイピストとしての機能はBさんと交換可能なものだ。ルーマンは、こうして機能概念の使い方を定め、「これとこれは機能的に同じ、交換可能だ」とか分析していこうぜ〜、と言います。そうすると、組織の別のあり様が見えてくるじゃんか。AさんとBさんが同じタイピスト機能を持ってるなら、Bさんがタイピストをやってる組織という可能性ね。こうして色んな可能性を見つけ出すことによって、アクシデントに強い組織が作れるハズだ!ユーが機能で可能性が見出せるならDOしちゃいなYO!!


機能概念の使い方を説明したら、この機能のパースペクティヴっつーのは、機能の「上位単位」に依存するんだぜ〜、という話がはじまります。この上位単位っていう言い方もよくわからなかったのだけれども、どうやら組織がどういう方向に進みたいのか、っていう価値観みたいなものみたい。機能はそれに依存して、内容が変わってきたり、するんだよ、と。ルーマン曰く、行政だったら「イデオロギー」と「組織の存立」という2つの上位単位がある、と例を出してます。これまた、わかりにくい言い方なんだけれど、前者は業務の効率とかそういうの、後者は組織の雰囲気とかそういうの、を意図してるっぽい。例えば、同じ「秘書機能」を分析する際でも、上位単位をイデオロギーにするならちょっとくらいブサイクでも仕事ができれば良いけど、組織の存立を上位単位にするなら「やっぱり秘書と美人はセットの言葉だろ〜。仕事できなくても良いから美人秘書を雇おうぜ!(その方がカッコつくじゃんか)」と、見方が変わってくる。「つまり、設定されるパースペクティヴごとに、別の比較可能性、代入可能性が与えられることになるのだ」。


このあとでいろいろ、じゃあこういう機能概念を突き詰めてくと仕事とか組織ってどういう風に見方が変わってくるの〜? とか話がはじまるんですが、うまい具合にまとめ切れないので今日はここまで!後半の難しげな話に頑張って食らいついていくとルーマンの別な論文『新しい上司』がより一層楽しく読める気がします(『新しい上司』は途中まで読みました。これは一転して、ものすごくとっつきやすい話で『新しい上司がくるとなんで組織はドギマギしたりするんだろうね』ということを分析している。そこには組織が機能化されてない側面が影響されてるのであろ〜)。