荒木飛呂彦 『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
荒木飛呂彦の絵がフランスのルーヴル美術館に展示された企画で制作された漫画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の日本語版が登場。いや〜、これはやはり素晴らしいのではないでしょうか。荒木飛呂彦初のフルカラーコミックスということですが、印刷された紙質や大きなサイズは普段コミックスでばかり触れてしまう荒木飛呂彦の絵の魅力を違った形で提示しているように思われます。大きいことは良いことだ、と言ったのは作曲家の山本直純ですが、そうした価値観を直ちに受け入れたくなるような出来。17インチのテレビデオを、56インチのフルハイビジョンに買い換えたようにド迫力で絵が迫ってきます。ストーリーは、ルーヴルの地下を舞台にしたミステリー・ホラー(ちょっとコルタサルの短編小説にありそうな)で、その核心部分についてはやや大味なモノとなっているのにも関わらず、痺れるような魅力を放ちまくっているのは端的に絵が上手い、というだけではなく、コマの見せ方や動きの上手さといった漫画技術の巧みさの現れでしょう。濃密な時間の流れ方をする短編、という言い方が適切かもしれません。特にパリに着いた露伴先生が絵葉書を選んでいて、振り返ると(ここでページめくり)ルーヴルがドーン! 変なポーズ、ギャーン! という流れは最高過ぎて死ねます。大河ドラマ的な連載漫画も素晴らしいのですが、荒木先生にはもっと短編も描いてもらいたいなあ〜、と改めて感じるのでした。短編を描く荒木飛呂彦と、連載を描く荒木飛呂彦とでふたりいれば良いのに。あとは愛蔵版コミックスのサイズで、ジョジョが出ないかな〜、と思いました。大きなサイズで良い紙質で第五部を読み直したい。