sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

松澤喜好『英語耳 発音ができるとリスニングができる』

 『DUO3.0』が3周目に突入したと同時に、アダム高橋さん(id:la-danse)からおすすめしていただいた教材をはじめてみました。とりあえず一度通読しただけなのですが、とても面白かったので紹介させていただきます。


 本書のコンセプトは「発音ができるとリスニングができる=発音できない音は聞き取れない」というもの。これはもっと噛み砕いて言えば「知らないものは、認識できない」と理解することができるでしょうか。ここでは日本語と英語は発音においてまったく違った体系をもつ言語である、という前提にたち、英語の子音と母音を分解して解説、読者に身につけさせることによって英語の音を認識できる状態=「英語耳」を作る試みがなされます。これを読んでいたとき、しばらく前に読んだ以下の記事を思い出しました。


外国語に母音を挿入して聞く「日本語耳」は生後14カ月から獲得 | 理化学研究所
 例えば「text」という単語、これは本来「tekst」と発音され、「kst」の部分はすべて子音のみの連続で発音されなければなりません(そして、英語耳の人はそういう音を認識している)。しかし、日本人の耳(=日本語耳)においては「tekusuto」と脳内で勝手に母音を挿入して認識してしまう。子音の連続が認識できない……という現象については、本書でも記述されます。この現象自体とても面白いのですが、それはさておき、英語耳を手に入れるためには「連続した子音」を認識できるようにならないといけない、ということでしょう。


 本書にはそのための発音トレーニングの方法がとても詳しく書かれていました。これを実践しながら読んでいるととても楽しかったです。「アとウの中間のような」という曖昧な説明が、後から出てくるのも良かった(こういう記述が先に書かれてしまうと、発音が日本語化されてしまいそうなので)。まずは音声学的なメカニズムの説明があって、その通りやるとちゃんとそれっぽい音が出るのが驚きでした。


 この発音練習は「発音バイエル」として体系化されています。このトレーニングを100回以上やれ、といきなりすごい回数を筆者は求めてくるのですが、それで英語耳が身に付くならやるよ! という気分にさせられるのは、本書の説明が構造主義の本に登場する音声学についての記述を想起させるところがあるせいでしょうか? 発音記号についてちゃんと勉強したのも、この本が初めてな気がしますし、とても勉強になりました。

 どうやら最近、改訂版がでた模様(改訂版のほうが少し安いです)。それにしても、この本を読んでいたら「中学・高校の先生の英語の先生が教えてくれたのは、ホントに受験のための英語だったんだなあ」と思いました。