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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

Pierre-Laurent Aimard/Ravel:Piano Concertos / Miroirs

Piano Concertos / Miroirs
Piano Concertos / Miroirs
posted with amazlet at 10.10.24
Ravel Aimard Boulez Cleveland Orchestra
Deutsche Grammophon (2010-10-05)
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 現代音楽のスペシャリストとして知られるピアニスト、ピエール=ローラン・エマールの新譜はラヴェル。《左手のための協奏曲》と《ピアノ協奏曲》はピエール・ブーレーズクリーヴランド管弦楽団との共演(ちなみにブーレーズはこの曲をすでにツィメルマンと録音している)。この2曲はともにライヴ音源で、録音の質がライヴ感、というか非スタジオ感があるのだが、まあ上々な演奏、といったもの。いや、でもスタジオ音源でラヴェル管弦楽法をバリバリに生かした感じの作り物っぽい音で聴いてみたかった。とくに《左手のための協奏曲》の冒頭、濃い霞がうごめくような低弦のなかからコントラファゴットのソロが始まる部分などは、音量を大きくしないとちゃんと聴こえないのでちょっと困る。音がミルフィーユみたいに低音から高音まで重ねられていく様子が素晴らしいのに、この録音ではそれがいまいちはっきりしない。もちろん一定水準以上の演奏ではあるのだが、エマールにはもっと驚くような演奏を期待してしまうのだった。《ピアノ協奏曲》にしても、アルゲリッチアバド/ロンドン響の「名盤」がすでにある。ただ、クリーヴランド管の演奏は素晴らしく(今年は読売日本交響楽団の演奏をよく聴いていることもあって)「世界の壁は厚い・・・・・・」などと思ってしまった。


 となると、この盤で評価すべきなのは《鏡》の演奏ということになる。このピアノ曲集のなかでは「悲しげな鳥たち」「道化師の朝の歌」の演奏が特別素晴らしい。速いパッセージで綺麗に音が並ぶのが耳にはいった瞬間のテクニカルな快感も存分に味わえるし、なんといってもエマールの清潔感のあるロマンティシズムが全開になっている感じが良い。この作品は今年の来日ソロ・リサイタルでも演奏するので楽しみにしたい。

(映像はエマール/ブーレーズベルリン・フィルによる《左手のための協奏曲》、あれ、こっちのほうが良い演奏のような・・・・・・)