パリへ #2
2日目。ホテルの朝食を食べたり、昨日の夕食の残りを片付けたりしてからルーヴルへ。
岸辺露伴もココで「ズギャァァーン」ってなっていたなあ……とぼんやりしていると、入場の長蛇の列ができていた。ただ、この入場口だけが混んでいたみたいで帰りに他のところから出たらガラガラだった。
ルーヴル内部からの一枚。とにかく広くて迷宮的に入り組んでいる美術館なのだった。ジャンルごとに区分けされた展示となっているもののそれを理解するのに45分ぐらいかかった気がする。リシュリュー翼のかなり地味なエリア(工芸品とか)から攻めていた。このエリアは3階に私の好きなフランドルとかオランダ、ドイツの展示があるので、人があまりいないときにじっくり観れたのは良かった。失敗だったのは「フラッシュ撮影禁止」のマークを「撮影禁止」のマークだと思っていたため、印象深かった作品をイチイチメモしていたこと。絵と一緒に撮影しておけば良かったんだよ……。
が、そこは21世紀。汚くて半ば判別不可能なメモを頼りにググったら印象深い作品の画像なんか出てきてしまうのだった。
Gillis van VALCKENBORCH, Scène de bataille biblique (défaite de Sennachérib?)。ピンクがかった雲がすげえ良い。
Valentin de BOULOGNE, dit LE VALENTIN, Le Concert au bas-relief。ホンモノはもっと暗い絵だった気がする。ハッキリした影の表現や、中央の小学6年生になってもおねしょとかしてそうなガキンチョの顔が良い。
Ambrogio da Fossano(Bergognone), La Presentation au temple。奥にぐぉぉっと吸い込まれていく構図。ものすごく顔色が悪くて、ロウソクみたいな顔をしている登場人物。
Baccio della Porta, dit FRA BARTOLOMEO, Minerve。豊満でも美人でもない女神の絵はめずらしいんじゃないか、と思った。田舎の女子中学生(食べ盛り)みたいである。
Giovanni SERODINE, Le Christ parmi les docteurs。ここまで地味な色合いの絵ばかり並んでいて自分の趣味がまるわかりになっている……。この絵はキリストの頭光さえもぼんやり。
Bartolomé Esteban MURILLO, Le Jeune Mendiant。ふと思ったがこれだけ他人の写真でも思い出を振り返ったりすることができるのだから、カメラなんか持たずに、メモ帳と旅終了後のグーグル検索でアルバム制作が可能なのではないだろうか……。
《モナリザ》なども当然観たが、人多すぎ。周囲には日本人の団体観光客がいたけれど、ガイドさんの話を聴きながら、ガイドさんセレクトでしか絵が観れないのはちょっともったいない感じがする。ダ・ヴィンチばっかり観せられる、とかさ。半地下の古代エジプト、ギリシャなどのコーナーも面白いのにね。ルネサンス絵画の華やかな世界のあとに、アフリカ・アジア・オセアニア・アメリカ美術コーナーに行ったら異形感がキワキワに感じられて良かったです。お土産にはエジプトの出土品の青いカバのレプリカを買いました。
こういうの。
ルーヴルの混んでないほうの出入り口には、Apple Storeが。超クール。
チュイルリー公園を抜けて、コンコルド広場へ抜ける。公園は白い砂がすごい勢いで風にあおられるので大変。ジーンズがきづくと真っ白になっていた。
昼食はマドレーヌ教会の近くにあるラデュレで。35ユーロの選択式ランチ・コースに(フォアグラのテリーヌなどちょっと高いヤツを頼むときは、7ユーロ追加)、ラデュレの名を冠したシャンパーニュ(白・ロゼ、各14ユーロ)、スパークリングのお水(値段忘れた)など頼む。私は前菜にスモーク・サーモンと、メインに鴨……だったかな。サーモンはスミレのクリームがついていて、シャレオツ。クリームなしだとあんまり……だったので、この組み合わせを考えた人はスゴい。たぶん、前世は蝶とか蜂。
マドレーヌ教会を素通りしてヴァンドーム広場へ。リッツ・パリのホテルマンの人がカッコよい。ホテルのバーは「ヘミングウェイ」。ここも文学史跡みたいなものですね。広場の周辺にはブレゲのお店もあって、ショー・ウィンドウにかぶりつき眺めた。どこの国で観ても良いモノである、ブレゲ。それではお聞きください、SPANK HAPPYで「Vemdome, la sick KAISEKI」。
ふらふらとノートル・ダム大聖堂方面と歩く。気がついたらモリエールの泉についていた。このすぐ近くにモリエールの自宅があったそうだが確認を忘れた。程度の低い下ネタばっかり書いているのに、こうして立派に奉られているのがすごい。日本でも200年ぐらい後に富永一朗先生の銅像が建つと良いと思う。
アンドレ・マルロー広場。このへんにジャーナル・スタンダードがあった気がする。
本屋さん。「Gallimard」とあるが、有名なガリマール出版社と関係があるのかどうかは不明。店内には「立ち読みしたら殺す」的なオーラを放っているおばあさんがおり、専門店的な雰囲気がすごかった。
オラトリオ教会の周辺。ストリート弦楽オーケストラが演奏していた。モーツァルトの交響曲第25番の1楽章とかを弾いていた。アマチュアにしては上手だな、と思っていたが、私たちのCDを買いませんか、と回ってきた人に訊ねたら「パリの音大生とかプロとかも混じってる」とのことだった。パリのストリート・ミュージシャンは自己表現のうっとうしい感じが希薄で(下手な人もいたけれど)良かった。
サン・ジェルマン・ロークセロワ教会。ゴキゲンなハウス・ミュージックにあわせて、ものすごいドレッドの人がカニエ・ウェスト的な人の似顔絵をライヴ・ペインティングしていた。教会の前でこんなことしていて良いのか、と思ったが、日本も東大寺で布袋、とかなのでどこにでも新しい文化に寛容な人はいるのであろう。
《パリの新橋》であるところのポン・ヌフ。SL広場があったりするわけではない。川沿いにはお土産屋さん・古本屋さんが多数あり、ボリス・ヴィアンなどがかなり安く売っていたりしたが「別にいまさらコレージュ・ド・パタフィジクという年でもないか〜」という気分になりスルー。大体、フランス語読めないし。
この日、ノートル・ダム大聖堂周辺では警察官による市民感謝デー的なものが開催されていた(ちかくに警視庁がある)。姿勢を正して白バイにのるポリスマンたちがカッコいい。騎馬隊の馬たちが近代化の成り行きとして鉄の馬に置換された、という歴史的趨勢を錯覚する。
せむしスタイルでノートル・ダム大聖堂へ入場。上のほうに登れるのだが時間が18時をまわりそうだったので「ノン!」と係の人に追い返されたのが残念。
パリ市庁舎の前。この日は日曜日だったので、いろんなところでイベントをやっているのだった。これはNBAのヨーロッパ・ツアーみたいなイベント(らしい)。フランスでのバスケ人気がいかほどか知る由もないが、私自身バスケを全然知らないので、本当はNBAの選手ではなくシカゴ・ブルズのユニフォームを着た熱狂的ブルズ・ファンの可能性がある。仮にファンだったとしても肌寒いなか薄着で頑張っているので偉い。
地下鉄を使って凱旋門へ。詳細は不明だがパレードをおこなっていた。すごい厳粛なムードだが、軍服を着たおじいさん(勲章をたくさん胸につけた)がみんなコスプレに見えてくる。いろんな時代の軍のユニフォームを着た人たちがいて多彩であるとともに、ブラスバンドが演奏する《ラ・マルセイエーズ》は無条件でブチあがるキラー・チューン。日本も《君が代》みたいに暗いのだか、明るいのだかよくわからない曲ではなく、明確に高揚感をあがる曲を新しい国家にすべきではないか。三枝成彰先生あたりにお願いして。
凱旋門の上から。エレベーターなどがないので年寄りにはキツそう。そういえば、ルーヴルも年寄りには大変な建物、というイメージ。というか、古いインフラや設備を使い倒してる感じなので全体的にパリは年寄り向けではない。ヨーロッパ全体にそういう傾向があるのかもしれないけれど、全然バリア・フリーじゃない。日本人嫌いの日本人の人は「日本は建物を大事にしない」と言いますが、都市の新陳代謝を高めることによって得られたものも多いはず、ということも実感できる。老後はヨーロッパへ旅行……などという甘い夢は捨て置き、若いうちにいくべきではないか。
階段ののぼりおりでクタクタになったのでシャンゼリゼ通りのカフェで休憩。テラスでビールを飲んでいる人が気持ち良さそうだったので、ビール(500ml、12ユーロ)を飲んだ。お店の名前は「ジョージ5世」。この周辺の駅は「シャルル・ド・ゴール・エトワール」、「ジョルジュ・サンク」、「フランクリン・ディー・ルーズヴェルト」と続いており、ものすごい戦勝国感を煽ってくる。日本だとこうした地名は「乃木坂」ぐらいしかない。
昼間にたくさん食べたのでこの日は夕食なし。帰ってビールを飲んだ。高アルコール度数のビールを売り出し中の模様で、最高で度数11%ぐらいのモノまで売っていた。値段は500mlの缶で2ユーロ前後(安い)。日本は第三のビールの低価格で勝負しているが、ヨーロッパはアルコールを上げることで勝負しているのか。早く酔えた者勝ち、的な。しかし、それってちょっと貧乏臭い気が……。
こうして2日目が終わった。続きはまた今度。