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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

音楽の現在(サントリー芸術財団 サマーフェスティバル 2010〈MUSIC TODAY 21〉) @サントリー・ホール ブルーローズ

 残暑が厳しいざんしょ! はい、今年もサントリー・ホールにて現代音楽フェスティバル「サマー・フェスティバル」が開催されています。これがあるからサントリー様には足を向けて眠れません。皆さん、プレミアムモルツを飲みましょう!(発泡酒だの第3のビールなんか飲んでたら羊水が腐りますよ! まあ私はキリン一番搾りを飲みますが……)本日はサマー・フェスティバルの初日、「音楽の現在」の室内楽編でいろんな国のいろんな世代の作曲家の作品が演奏されました(すべて日本初演)。曲目は以下。

曲目

ジャン=リュック・エルヴェ(1960−):「オルタナンス(交替)/トポグラフィ」〜エレクトロニクスとアンサンブルのための(2009)
クリストフ・ベルトラン(1981−):サトカ(2008)
ジョナサン・コール(1970−):遺された灰(2009)
ジョルジュ・アペルギス(1945−):「シーソー」〜アンサンブルのための(2007−2008)
マルトン・イレーシュ(1975−):「トルソIII」〜アンサンブルのための(2007)
出演
指揮:佐藤紀雄
演奏:アンサンブル・ノマド
エレクトロニクス:有馬純寿

 演奏会前にアルコールをかなり摂取してしまったので、ぶっちゃけ起きてられるか心配でしたが最若手であるベルトランの作品以外は楽しんで聴けました。ベルトラン作品は白石美雪が書いている通り「リゲティの音楽を想起させる」(これもリズミカルなフレーズの反復によって構成された音楽のためのクリシェみたいですが)のを確認した瞬間に記憶がなくなりました。つまり気持ち良く眠れた、ということ。フランスの新鋭とのことでしたが期待はずれだったかも、っつーか「現代フランスで最も注目される○○」とか紹介される人と私の趣味の相性が良くない気がする。プログラムノートで偉そうなこと言うけど、音が面白くない人が多いんじゃ……とか思ったりする。


 でも同じフランスのエルヴェの作品はしょっばなからかなりグッと来ました。この50歳になる作曲家は、スペクトル楽派の影響から出発したそうでこの文句からして嫌な予感がしたんですが(今年のミュライユの演奏会が全然楽しくなかったから)良かったです。曲の全編をメタリックな音響の反復が支配している……のですが、同じような音が連続しているかに見せかけて音を構成する要素はどんどん変化していく。同じなのに、毎回違う。こうしたアンビバレントな聴き心地が楽しく、ライブエレクトロニクスによる極端な位相変化や録音素材の再生と言った飛び道具も効果的でした。音の鋭さが全然違うけど山根明季子の曲を思い起こしました。


前半のプログラムの最後、ジョナサン・コールの曲は個人的なハイライト。本日演奏された曲のなかでは一番音数が少ない音楽で、白石美雪は「廃墟」なんて言っていますが、悔しい、っと思いながらもこの表現はパクりたい。この廃墟系サウンドスケープから、私は「時代劇」をイメージしてしまいなんか楽しかったんだよ。なんか道の両脇を土塀に囲まれた細道を、二本差しのサムライが歩いてるんだけど、次の瞬間、忍者とか辻斬りとかに殺される……そういうシーン。それもこれも使用されているホイッスルのせいなんですが……。あと、この作曲家、音楽からレトリックは排除したい、ってなことを書いてて興味深かった。曲中になんども「曲の終わり」ぽい身振りが挿入されているのはその反映なのか? 知らない曲に出くわしたとき聴衆は、長い休止のあいだで「拍手の準備」をしているような雰囲気がある。勝手に曲の終わりが聴取される、というわけ。コール作品はこうした習慣を逆手に取ってる気がした。


 後半な2曲は、リッチでロマンティックな現代音楽、って感じで良かったです。とくにギリシャのアペルギスの作品が良かった。冒頭から音がどんどん重なっていって、豊かな音響が出来上がっていくんだけれど、それが後半に低弦のハーモニクスによって一掃される。ここに超カタルシスを感じた。


 明日は今年のテーマ作曲家、ジョナサン・ハーヴェイの講演です。