ザイ・クーニン+大友良英+ディクソン・ディー/Book From Hell
BOOK FROM HELLposted with amazlet at 10.08.07
しばらく前に買って感想を書きそびれていた新譜。ひさしぶりにこの手の即興音楽の音源を聴く――一時期1970年代のイタリアの即興音楽を集中的に聴いたことがあって、そのせいかこの手の音楽を聴くたびに「30年前の即興音楽の方法論と、今日の即興音楽の方法論とに違いはありやなしやと」と考えてしまうのだが、これはアジアの音像というか、このメンツでしかなし得なかったであろう音が収録されていて素晴らしかった。ザイ・クーニン(シンガポール)、大友良英(日本)、ディクソン・ディー(香港)による2008年のライヴ音源。アット・シンガポール。私はシンガポールの9月を体験したことはないけれど、かの国の9月は日本のお盆の気候に似ているのだろうか。音の質感から、その場の空気感とか、温度感が伝わってくる、そういった音である。静寂と轟音。1時間超、ノンストップで展開されるリニアな音の連なりは、終始ヒリヒリするような緊張感をもたらしつつ、叙情的である。こうして大友良英のギターの新しい録音を聴くのも久しぶりだけれども、彼の「ついでてしまうような」手癖フレーズを聴いていると、これも非常にパーソナルな音楽な形のような気がし、即興音楽の自由なフォーマットのなか個人な音楽の表現がシンプルに打ち出されて、そしてそれがまさしく「大友良英の音」として聴けてしまう事実に改めて驚かざるを得ない。