Vinicius Cantuaria/Samba Carioca
新譜。ブラジルもの。ヴィニシウス・カントゥアリアについてはまったく知りませんでしたが、アート・リンゼイがプロデュースしていたので買いました。個人的な経験として、アート・リンゼイがプロデュースするブラジルものにはまったく外れがなかった。このアルバムにはビル・フリーゼルだの、ブラッド・メルドーだの、マルコス・ヴァーリだの大物が参加しているのですが、邦盤の解説を読んだら、昔々はカエターノ・ヴェローゾのバンドに参加してた、とか書いてあってかなり大物ミュージシャン。1951年生まれだから、かなりのオッサンですけれど、ジャケットの写真からは年がぜんぜんわからず、30代ぐらいの中堅ミュージシャンかと思いました。
このアルバムの基盤には、イージー・リスニング的に聞き流せそうなボッサ的なゆるやかさを感じるのですが、ただのBGMには終わらない密度が存在しています。近年のカエターノ・ヴェローゾが、オルタナ感バリバリのブラジリアン・ロックを連発しているのと比較すると、カントゥアリアの音楽はとても穏やかな主張のように感じます。しかし、この音の作りこみや重ね方にはオルタナ的なものを感じざるをえず、ひそかに前に進んでいく雰囲気がとても素晴らしい。ジョビンの「無意味な風景」のカヴァーもやっていますが、この一工夫がある音響的なアプローチは聴き応えと同時に、心を穏やかな状態へとほぐしてくれる感覚を与えてくれます。
(『無意味な風景』原曲の音源。ヴォーカルはエリス・レジーナ&トム・ジョビン)