sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

ココロ社『超★ライフハック聖典 〜 迷えるアダルトのための最終☆自己啓発バイブル』

 ココロ社さん(id:kokorosha)による単著第2弾を読みました。第1弾はかなり大人しい、マトモな感じのテイストが漂う本でしたが、第2弾はすごかったですね……。セルバンテスラブレー、スターン、現代ではピンチョンを思わせる脱線につぐ脱線が展開され、ココロ社文学が炸裂! といった感じでして、この古典的脱線文学の系譜の中に、このブロガーが存在することを改めて確認してしましました。言うまでもなく最高です。言っていることは基本的に前著と一貫性があり「人間の評価基準は曖昧でいい加減」と言ったところを逆に利用する、というライフハックが紹介されています。


 また、従来の「生産性をあげよ!」、「効率を高めよ!」と声高に叫ぶようなライフハックへの批判(その批判の矛先は、ライフハック本を読みつつも一向に成果を上げることができない構造、成果を上げることができない人にも向いている)も厳しくなっているように思われます。この意味で、この本のタイトル「超★ライフハック聖典」とは「すごいライフハックの本」という意味ではなく、ライフハックを超越した視点からライフハックを観察する本(メタ-ライフハック)的なものとして捉えられるべきでしょう。


 この本での最終的な結論としては「ライフハック云々で悩んでいるより、自分に合った一個の原理みたいなものを決めて遂行していくことが一番スムーズである」といったことがライフハックとして紹介されています。これはとてもシステム論的に(?)正統な答えのように思えます。現代にはさまざまなライフハックが紹介され、情報が過多である。そのような状況において、我々は一種の決定不能性に直面する可能性がある。さまざまな選択肢が存在し、どれを取るべきなのかわからない。


 このようなときに「あえて」何らかの原理を基にしてスムーズに行動を選択することによって、そのような複雑さを回避することができる。その楽さを著者はライフハックとして薦めているように思えました。このような戦略は、一時期の宮台真司の変奏と捉えてもいいのかもしれません。多くの人にとっては、その「あえて」すらも選べないからこそ、困った事態に陥っているのかもしれませんが……。