Miles Davis/Miles In The Sky
Miles in the Skyposted with amazlet at 08.10.13
マイルス・デイヴィス、1968年のアルバム『マイルス・イン・ザ・スカイ』を聴いた。ハービー・ハンコックに電子ピアノを演奏させ、エレクトリック・マイルス(マイルスがものすごく変な服を着ている期)への助走……とも言えるアルバムだが、これが超名盤で驚いた(なんで今まで聴いてなかったんだ?ってぐらいに)。ジョージ・ベンソンが1曲だけ参加して、そのほかはいわゆる「第二期黄金クインテット」の布陣で、新しいステージに突き進んでいこう、みたいな態度が見えてくるような濃い演奏が収められているし、曲も『E.S.P』〜『ネフェルティティ』までの突っぱねるような冷たさが軟化してポップになっているところが良い。とくにトニー・ウィリアムスとハービー・ハンコックの光り方が目立つ。この2人にロン・カーターを加えたリズム・セクションによって、音楽がグイグイと牽引されていき、その上でマイルスとウェイン・ショーターが踊る……ようなスタイルがここに来て完成したみたいにも感じられる――「1968年はいろんな種類の変化で満ちていた、だが俺にとって、それはすごく興奮させられるような音楽的な変化だった、そして、その音楽はどんな出来事よりも信じられないぐらい素晴らしいものだった」とマイルスは語っている*1。この自信の根っこにあるものを、演奏から聴き取ることも可能なように思われる。あと、これがアマゾンだと900円弱で買えてしまう事実には色々とクラクラさせられてしまった。
これを聴いていたら、当時のマイルスがインタヴューなどで一体どういうことを言っていたのか気になって、本棚にあった資料のなかを探してみたら1969年のインタヴュー記事が出てきた。そこで彼は、ボクシングのエクササイズと楽器演奏の関連という、たぶん吹奏楽器を演奏する人でもなければピンとこなさそうなことを延々と語っているのだが、そんなまったく音楽とは関係が無い記事でも、記事になってしまうところに当時のマイルスの人気ぶりが窺いしれなくもない。
D*2:ボクシングを始めてどれくらいになりますか?
M*3:物心ついてからこの方ずっとさ。
D:ええと、つまり、ジムでやるようになったのは?
M:多分10年くらい前だな。
D:あなたにケンカふっかけて来るような連中はいませんでしたか?例えば、演奏してるクラブなんかで?
M:クラブでそんなことあったらぶっ殺してるぜ。
「俺にとってはボクシングは日常であり、昔からケンカで負けたことはなかった」とフカシまくるマイルスが最高。実際のマイルスは、歯医者の息子で良いところのおぼっちゃんなので、たぶんケンカなんかあまりしたことなかったんじゃないかと思うんだけれども。