小笠原信夫『日本刀――日本の技と美と魂』
- 作者: 小笠原信夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 新書
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言わずもがな、日本刀は武器である。が、室町時代ごろから既に「美術品」あるいは「贈答品」としての価値が成立しており、折角の切れる刀という機能的価値が眠ったまま通用していた。こういうのはなんだか屈折しているように思うのだけれど「目利」という刀の価値を決定する鑑定人が専門の職業として成立し、朝廷や幕府から認定された権威によって価値が決定されるシステムが構築されている感じは面白い。そういう折紙付の商品を身につけることが武士の間で「立派なこと」とされていたのは、現代で言うならサラリーマンが雑誌なんかで紹介されているブランド時計を身に着ける感覚と全く同じなんじゃないだろうか。
武器が装飾品を兼ねる、というのがこの本で「日本独自のもの」とされているけれど、そんなことはなく西洋でもみられる事柄である。例えば、甲冑なんかがその代表例として挙げられる。ベルセルクとかに出てくる、妖しい洋館に置いてありそうなヤツ*1。ただ、西洋の甲冑においては、装飾が豪奢になるあまり、騎乗時に馬が潰れてしまうぐらい重くなってしまったものもあったらしい。そういう「やりすぎちゃってる感」も面白いんだけど。それに比べて日本刀は「装飾品(美術品)」として取り扱われるようになっても尚、機能が価値の中に取り残されていたのが特色だと言えそう。