日本絵画のひみつ @神戸市立博物館
神戸にいく用事があったため、そのついでに神戸市立博物館に立ち寄りました。この博物館には内部に「日本において製作された異国趣味美術品」を蒐集した池長孟という大人物のコレクションを収蔵している南蛮美術館が存在する施設です。先日の「南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎 @サントリー美術館」で展示されていた作品のなかにはこの美術館から貸し出されたものが多くあります。この日はサントリー美術館で出会ったエキゾチックな作品群と再会し、改めてその不思議な魅力を再確認できました。
この日の特別展は「日本絵画のひみつ」。伺ったのがちょうど初日、とまるで自分を待ってくれていたかのようなめぐりあわせですが、世間的にこの手のジャンルが人気なわけではないせいか会場はガラガラ。おかげでサントリー美術館ではじっくり観ることのできなかった南蛮屏風の細部も確認できて良かったです。日本画に使用された顔料や、画家が模写を先達の作品を模写することで伝わっていく手法やそこからわかる影響関係がこの展覧会における「ひみつ」とされているようです。《模写》というテーマでは狩野探幽が原本であるという「南蛮人交易図屏風」の様々な粉本(模写したもの)が展示されていて、とても興味深かったです。原本の存在は現在確認されていないのですが、右から左へと物語のような流れを感じさせるユニークな図柄は多くの画家によって模写された理由を納得させるものです。
今回の新しい収穫としては、秋田蘭画との出会いがひとつ挙げられます。秋田蘭画は18世紀後半の秋田藩藩主、佐竹曙山とその家臣であった小田野直武によって隆盛した西洋絵画の影響を多大に受けた写実的な日本画の流派だそうです。お殿様でありながら平賀源内を招いたり、自身もセンス爆発な絵を描いていた佐竹諸山は「秋田のルドルフ2世」とでも言うべき人物だったかもしれません。くっきりとしたコントラストで描かれた鳥や花は、今で言えばほとんどインテリア絵画的なセンスなのですが、それが掛け軸になると異様なクールネスを放って見えます。また小田野直武が杉田玄白らによる有名な『解体新書』の扉を書いている、という事実も興味深かったです。秋田蘭画とはまた別に、ほとんど同時代の洋風画家、石川大浪はオランダ語の本の図版を多く模写しているます。これもカッコ良かったです。