sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

鳥サウンドがすごい。

 続けて二本目。ヒッチコックの映画は初めて。全くの偶然だけれど『ダーティーハリー』も『鳥』もサンフランシスコ(またはその周辺)が舞台になっていた。

 最初から主人公が場面(というか映画的な世界)にずっと馴染まないような感じで「異物感」が強烈だったんだけど、映画そのものも世界に異物が入り込んだときのアレルギー的な反応、パニック症状みたいなものが描かれてるように思った。しかし、これほど「精神分析的に読むとすっきり解釈できますよ」と思わされる映画は見たことがなかった。そりゃ、ジジェクも大喜びするわな。準主人公的な弁護士ミッチとその母親の関係にも何か倒錯した親子愛を感じさせるし、もっと露骨なものであればレストランで主人公がヒステリックな罵声を浴びせかけられるシーンでは、その批難をする人たちは全て女性だ(実際には批難は代表者的な一人の女性によってなされるのだが)。

 あと主人公が鳥に襲撃喰らってるシーンは、ものすごくエロい。本気で興奮してしまうぐらいエロい。このシーン、カメラは主人公の右手→顔→左手→右手→顔…と繰り返し切り替わっていくんだけど、典型的なベッドシーンのカメラワークな感じもする。なんだ、このエロスは。

 やっぱり私は映画を観ていても音が気になって仕方ないのだけれど、この映画のクライマックスで聞かれる鳥の鳴き声はすごい。シンセサイザーとテープの回転速度操作でカモメの大群が襲撃している感じを演出してるんだけど「シュトックハウゼンか!」っていうぐらいの音のカッコ良さである。これ、5.1chで音を組み直したら大変なことになるぞ。(シュトックハウゼンジョージ・マーティンあたりに頼みたい)。

 ヒッチコック、面白かったのでどんどん観て行きたいと思います。ジャングルジムに集まるカラスのところと、レストランで議論してるシーンが好き。議論シーンって海外の映画作品でよく観る気がして、すごく日本と外国との文化の違いみたいなものを感じる。『12人の怒れる男』しかり、『真昼の決闘』しかり、外人って議論好きだよなぁ、というか。