sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

ピンク・フロイドの2011年デジタル・リマスター:音、良くなってます

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ピンク・フロイドの過去タイトルのデジタル・リマスターはこれで2度目だそうです。レコード店では「セットで買うと箱をつけます!」などのキャンペーンが打ち出され、音楽雑誌でもピンク・フロイドの特集が組まれていますから「今、何時代だよ!」とものすごい時代錯誤感さえ感じられるのですが、なんかリマスターの度にこうして話題になるって、辞書みたいな売り方だな、と思わなくもないです。このままでは次の世紀には第8版ぐらいまでいってしまい、しまいにはブルックナーのように版の違いによって内容まで違う……などの展開もあり得るのでは。メンバーが全員亡くなった後に「第6版で追加された8小節によって、本来ロジャー・ウォーターズが目指していた姿が完成された」「いや、それは原典への冒涜だ」などの論争が起こったりする。ゆくゆく、それは録音芸術とは何かの根本を巡る大事件に……(妄想)。


持っているタイトルをすべて買い直すほどに恵まれているわけではありませんから、とりあえず私は「聴いてたけど実は持っていなかったアルバム」『夜明けの口笛吹き』、『おせっかい』を購入。印象としては、音の分離がハッキリして、各パートは全体的にコンプがかかって太く、音像クッキリ……言うなれば昨今のデジタル・リマスターの基本に則ったような音になっている、というのがまず第一。劇的に変わったか、というと元々「針おこしでCD化されてた」とか問題がある形でCD化されたわけじゃないですから、特段驚くほどではない。


そもそもなところ、この音の作り方はどういう再生機器を念頭において作られているでしょうねえ。高級オーディオで聴いてみたらどうなるのかが気になります。音楽プレーヤー&ヘッドフォンで聴くときには、音の粒がガッツリと前に出てきている感じがするので「おお!」と思うんですが、ちょっと疲れるかも。でも、それによってSEっぽい変則的な音なども聞き取りやすくなっていますから、ピンク・フロイドというバンドがスタジオで制作した編集芸術の模様は把握しやすくなっているようにも思いました。「あ、こんなことやってたんだな」と気づかせてくれる。ファースト・アルバムに「このバンドのすごさが全然伝わりきれてない!(ライヴはもっとスゴい!)」とコメントしたピート・タウンゼントにも聴いて欲しい(難聴で違いに気づけない可能性もありますが)。


スゴいバンドだったんだな〜、という再確認はもちろん、良い曲書いてるな〜、とも思いました。「ピンク・フロイドでは『原子心母』のB面曲が好き」派の人は、当然『おせっかい』のA面2曲名からもツボだと思いますが、アコースティック・ギターの質感がキラキラになっているのでココは聴きどころかと。個人的に一番印象的だったのは、フォーキーな楽曲でのこうした音の変化でした。プログレ感全開の轟音のあとでコレをやられたらハマるなあ〜、と、してやられたら感が……以上、なんだかんだめちゃくちゃリマスター再発を楽しんでしまっているわけです。追加で別なタイトルも買おうかな、とか思っちゃったりもしますが、今月はあのバンドのリマスター・ボックスも控えているので、しばし保留。