冨永昌敬監督作品 『乱暴と待機』
乱暴と待機(初回限定版) [DVD]posted with amazlet at 11.08.27
なんとなく映画の気分になって旧作をいろいろと借りる祭その2。冨永昌敬の長編は怪作『パビリオン山椒魚』(天才レントゲン技師! サラマンドル・キンジロー財団! 第二農協!)から私のツボにハマりっぱなしなんですが、この『乱暴と待機』は気がついたら劇場公開が終わっていて観れていませんでした。原作は本谷有希子ですが、どこまでが冨永昌敬のセンスでどこまでが本谷有希子のセンスなのか、原作を読んでないので分かりません。前作『パンドラの匣』(太宰治)も「こんな変なセリフ、原作にあったっけ!? 《盛ってる》だろ!」と思って調べてみると、ちゃんと原作通りだったりして。今回も相当むちゃくちゃな映画だな……と思って爆笑しながら観たのですが、テンションは『パンドラの匣』や『パビリオン山椒魚』のほうが良かったかも。もう浅野忠信の第一声から笑ってしまいましたが、この映画はとにかく浅野忠信の怪演が光る。ずっとああいうしゃべり方の役をやっていて欲しいぐらい。「カセットテープの趣味が高じて、カセットテープ関連の会社を設立した」、「治った」(浅野)、「そういうところは積極的に麻痺していこうよ〜」(これは山田孝之)などのセリフは名言も頻発しています。このフィクションの都合の良さを拒絶してしまう人も多そうですが、私は大好き。お話としては結構オーソドックスなものなのに、どうしてこんなに「変」なのか。そして小池栄子の顔を見るたびに、パイプ椅子で殴られている人の映像が脳内で自動再生されてしまう呪縛はいつ解けるのか。