Fernando Kabusacki/Luck
サマレア&カブサッキ*1に引き続き、フェルナンド・カブサッキの新譜『Luck』を聴いています。輸入盤を買ったのかと思ったら日本盤だったみたいでライナーがついてきました。その文章によればこれが通産7作目のソロ・アルバムとのこと。カブサッキのキャリアについても紹介されており、これがカブサッキのソロ初体験となる私にはありがたかったです(普段、ライナー・ノーツってほとんど読まないのですが……)。カブサッキとロバート・フリップの関係は予想以上に深いのが驚きで(キャリアの初期にフリップとの関係もあったんですよ、ぐらいのライトなものかと思っていました)ギター・クラフトのインストラクターも務めているそうな。1分未満の短いトラックを含む全28曲の本作は、カブサッキの多彩さをまるっと編集したような極彩色のアルバムでした。雑然といろんな音が飛んでくる感じが素晴らしいです。
サマレア&カブサッキのアルバムが「80年代クリムゾン + トータス」という風に陳腐な形容ができてしまえるのに対して、このアルバムはそう一筋縄にはいきません。はじまりこそアンビエントな雰囲気ですが、スピーカーがブッ壊れたのでは、というゴク太な音圧でパーカッションが鳴ったり、音のレンジがとにかく広く、携帯音楽プレイヤーでイヤフォン/ヘッドフォンをして聴く音楽の規格からは完全にハズれています。カブサッキのギターも、マニュエル・ゲッチングも、ロバート・フリップも、エイドリアン・ブリューも、パット・メセニーも全部入りになってます感があって非常に面白い。つまり、ここに挙がったギタリストが好きな人はとりあえず買っておけ、というアルバムなのでございましょう。この自由度の高さはブライアン・イーノの初期のソロ作に通じるかも……と思いつつも、この雑多さ/何が出てくるかわからない感じに一番近いのは、実はプリンスやベックなのでは? と思わなくもないです。こうした天才宅録家の空気が、職人肌のスタジオ・ミュージシャンっぽい感覚と上手く融和したみたいです。実際、本作はカブサッキがスタジオで録りためた音源に、ゲスト・ミュージシャンが音を重ねて作っていったものなんだそう。アイデアを上手く編集したらこんな面白いことになってしまう、というのもなんか奇蹟みたいですよねえ……。
初回盤には2008年に録音されたライヴセッション音源が別ディスクで入っているそうです。これも良くてですね……、結構普通にジャズっぽいことをやっていたりするんですが、この前の来日を迷った挙句に見送ったことをちょっと後悔してしまっているわけですよ……。アレ、でもこの前の来日時の大友良英とセッション音源がもう売ってるの……? これはこの音源も買って聴けというお告げなのか?