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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

芥川作曲賞創設20周年記念 ガラ・コンサート〈管弦楽〉サントリー芸術財団委嘱作品 (サントリー芸術財団 サマーフェスティバル 2010〈MUSIC TODAY 21〉) @サントリー・ホール 大ホール

曲目
三輪眞弘(1958−):弦楽のための369、B氏へのオマージュ(2006)
山本裕之(1967−):モノディ協同体(2005)
夏田昌和(1968−):オーケストラのための「重力波」(2004)
江村哲二(1960−2007):プリマヴェーラ(春)(1996)
出演
指揮=秋山和慶
ソプラノ=森川栄子
管弦楽=東京交響楽団

夏田昌和の作品は事情により演奏されず)サマー・フェスティバルの5日目は芥川作曲賞の創設20周年のガラ・コンサート第一弾。芥川作曲賞の受賞者はサントリー芸術財団からオーケストラ作品を委嘱され、2年後の本選演奏会で初演される、という仕組になっているのですが、今回の演奏会のプログラムはその過去の受賞者への委嘱作品から選んだもの。全体的な印象なんですが、先日の海外の作曲家の作品コレクションと比べると、日本の作曲家たちはコンセプト、というか目指しているところが複雑なのかもしれない、と感じました。海外の作曲家の曲がひとつのキーワードによって解釈のアプローチを進めることができるように思われるのに対して、日本の作曲家は複数の視点をもたなくてはならない……みたいな。海外、というとかなり大雑把なくくりになってしまいますが、日本の作曲家とは言語が全然ちがう、と思いました。


 とくに印象的だったのは、三輪眞弘の《弦楽のための369、B氏へのオマージュ》と江村哲二の《プリマヴェーラ》。三輪作品は、中沢新一とのコラボレーションから生まれた作品だそうで、まあ、中沢新一はどうでも良いのだが「古代ツダ(トゥダ)民族」という南米古代民族が使用した弦楽器の奏法を想定して書かれているのだとか。しかし、古代ツダ民族など存在しない(ダウトのアナグラムなのか? これは)。これは想像上の民族の手法を取り入れたものなのだ。こうしたマジック・リアリズムめいた作品のコンセプトも私の好みだった。B氏ってボルヘスか? と思ったけれど、これは勘違いで、ベリオともうひとりイニシャルがBの作曲家に捧げられているみたい(会場で売っていたスコアに書いてあった)。ひたすら倍音が重なっていき、終盤で驚くべき演出があってそれにグッと来た。もう一度聴きたかった。作曲家自身によるこの作品の弦楽六重奏版への解説はこちら。江村作品はなんか猛烈にうっとり系でした。なるほど……こういう美しさもあるのか、と(うまく言葉にできません)。3年前に47歳で亡くなっているのですが、それがすごく惜しまれました。とくにソプラノ・サックスの天に昇っていくみたいな長いフレーズがとても印象に残りました。