トリスタン・ミュライユの音楽 @東京オペラシティ・コンサートホール
出演
野平一郎(指揮)
原田 節(オンド・マルトノ)*
トリスタン・ミュライユ(オンド・マルトノ)**
新日本フィルハーモニー交響楽団曲目
2台のオンド・マルトノのための《マッハ2,5》(1971)*/**
オンド・マルトノと小オーケストラのための《空間の流れ》(1979)*[日本初演]
オーケストラのための《ゴンドワナ》(1980)[日本初演]
大オーケストラとエレクトロニクスのための《影の大地》(2003-2004)[日本初演]
東京オペラシティの同時代音楽企画「コンポージアム 2010」に足を運ぶ。この企画に初めて行ったのは去年のヘルムート・ラッヘンマンのとき*1で、これはラッヘンマンの音楽にハマるきっかけを作ってくれたので今年も行ってみた。今年は、フランスのトリスタン・ミュライユ(1947-)の特集。彼はコンピューターで音の倍音構成を解析し、そのデータをもとに作曲をおこなっていく「スペクトル音楽派」の代表である。この試みで彼らはひとつのムーヴメントをつくり、ブーレーズやらノーノやらシュトックハウゼンといった作曲家の「次の世代の人たち」として評価されている。高まる期待。しかし、事前の予習を一切なしで臨んでみたら見事に返り討ちにあった気分になった。うーん……。わかる/わからない、ではなく、これは好きじゃない、と思った。
代表作《ゴンドワナ》からして「鐘の複雑な音からオーケストラ作品を作りました」というコンセプトが冒頭で分かってしまった瞬間に「出オチじゃないか!?」と疑ってしまう。この手の「音のテクスチュアがさまざまに変動していく」系(タブローがリアルタイムに変化していくような音楽)は、好き嫌いがはっきり出てしまうのかもしれない。私はもっとむちゃくちゃな音が好きだし、《空間の流れ》などは「アンビエント・ミュージック/音響派とかをやたらと賞賛している人たちにウケそうだな〜」ぐらいにしか思えない。家で本を読みながら聴くぶんには「なんか鳴っているなぁ」ぐらいな感覚で好きになれるかもしれない。しかし、面と向かって聴くにはつらかった。もうこういう音楽はコンサート・ホールで聴くことができない。そういう体になっているのかもしれない。
ただ、2台のオンド・マルトノが並んでいる光景というのはなかなか萌えた。生オンド自体は以前に原田節の演奏でメシアンの《トゥーランガリラ交響曲》を聴いた際に体験したが、やはり2台となると壮観だ。喩えるなら、ジェフ・ベックとエリック・クラプトンが共演している感じか!? そのぐらいインパクトがある。しかし、その2台のオンド・マルトノを使用した《マッハ2,5》も、リボンを使ったトルゥゥーーンみたいな音じゃなくて、モヤァァァンとした音が続く作品だったのでちょっとしょんぼり。俺はあのトルゥゥーーンが聴きたかったんだよぉ……。しかし、オンド・マルトノは大変品のある楽器だなぁ、と思う。フランス人が作った楽器、という感じがする。