sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

廣松渉『新哲学入門』

新哲学入門 (岩波新書)
広松 渉
岩波書店
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 宮台真司に多大な影響を与えたという伝説的な思想家、廣松渉の『新哲学入門』を読みましたが、半分ぐらい読んで投げました(つまり読んでません)。これ、難しいよ……。あとがきに「著者は、新書という制約を自覚するにつけ、なるべく簡略にしかもわかりやすく書こうと心がけましたが、程度を下げることはしなかったつもりです」とありますが、ちょっと私には程度が高かったかもしれない……というか、ちゃんと理解するまでじっくりと読む根気が足りませんでした。マルクス研究者としても名高い廣松先生ですが、私が以前『資本論』を半分で挫折したことを考えると、自分のマルクスとの相性の悪さを感じてしまわなくもないです(アドルノとかルカーチとかベンヤミンとかは読めたのだけれど……)。


 とはいえ、まったく得るところがなかったわけでもありませんでした。とくに緒論ではこの手の本が常套句としているように「哲学ってなんだ? なんのための学問なんだ?」という問いへの廣松先生なりの解答がなされていて、これは大変感銘を受けました。廣松先生は、我々が物事を認識したり、思考したりするその根本的な枠組・基盤を「ヒュポダイム」と呼んでいます。さしあたり、哲学とはそういうヒュポダイムを批判する性格と呼んでさしつかえない、と先生は書いていらっしゃいます。これは「なるほど!」と思いました。これまで散々哲学関連の本に手を出してきましたが「昔の人は、なんのためにこんなことを考えたんだろうな」と思わなくもなかったので。


 そんなわけで「○○は××みたいなことを言っていた」、「その後の△△は……」と言ったような哲学史的な話は一切登場せず、本書は近代哲学のヒュポダイムをどういう風に批判すれば良いのか(それを乗り越えることで何が見えるのか)、といった哲学的な営みを紹介するもの、と言えましょう。廣松先生と一緒に考えようよ! 的な。なので、ちゃんと読めばすごく面白そうです。暇な高校生とか大学生とかが、考えながら読むと良いのでは。逆に私みたいに「へぇ〜、あの人ってこういうことを言ってたんだぁ〜」ということを手っ取り早く知りたい方にはオススメできません。ああ、でも廣松渉入門には良いのかもしれない。