sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

クエンティン・タランティーノ監督作品『デス・プルーフ』

 いまさらだけれども、これ、タランティーノの最高傑作なんじゃなかろうか……見ていて目がギンギンに冴えてくるような痛快、かつ躁状態映画だった。相変わらず大した中身もないのだが、これが映画である以上、もはや映画としかよべないような絶対的な純度で面白い映画が成立してしまっているようなすごい作品。もちろん、引用や小ネタの数々がいつものように散りばめられているのだが、それらをいちいち指摘していくことが極端に馬鹿馬鹿しくなること必死であろう。とくに意味もなく映画ファンを喜ばせるだけの引用が無意味な純度の結晶化に拍車をかけているような気がしないでもない。この作品の印象はなんだか『崖の上のポニョ』にも似ている。これら2つの映画の「正しい鑑賞方法」とは同じ態度なのだと思う。どちらも意味を通り越した快作で、ただ画面に集中するだけで、映画と観客のあいだには幸福な関係性が生まれてしまうんじゃないか。