菊地成孔ダブゼクステット『Dub Orbits』
Dub Orbitsposted with amazlet at 08.07.21Naruyoshi Kikuchi Dub Sextet
ewe records (2008-07-16)
売り上げランキング: 317
ふっと思ったんだけど、これまで80年近くに及ぶジャズ史、および、70年近くに及ぶジャズ批評史において、菊地成孔の一連のアルバムほど「コンセプトありき」で語られるジャズはなかったんじゃなかろうか。これまで行われてきたジャズ批評的言説をつぶさに見ていくと、例えばプレイヤーの感情であったり、思想であったり、あるいは、演奏技術であったり、またはミュージシャンが書いた楽曲の素晴らしさであったり、そういうパーソナルな部分に焦点が当てられてきたことが分かる(黒人のやるジャズが人種差別への怒りへと結び付けられたりとか)。しかし、菊地成孔のアルバムではそうではない。菊地成孔ダブゼクステットになってからは「モード・ジャズ+ダブ」という、DCRPGであれば「70年代マイルスのポリリズム的発展」という、そういう面においてばかり語られる。「トニーは最高だ」、「ウェインは最高だ」、「マイルスは最高だ」、ハービーは……、アイアート・モレイラは……といった焦点の当てられ方はまずされていないように思う。この点が私にはとても面白い。音楽の斬新さ以上に、こういう部分が斬新だとさえ思う。まるでAOR――いやAOR以上にAOR的なのかもしれない――スティーリー・ダンでさえ「スティーヴ・ガッドが……」云々と語られてきたのだから。
えーっと……、カッコ良いですよ。