中原昌也『中原昌也作業日誌2004-2007』
まだ読み始めたばかりだけれど、あまりの感動に読みながら軽い吐き気を催しそうなほど良い本なので当ブログでも紹介させていただきます。ホント、素晴らしい。「金がない」「書けない」という愚痴がほぼ毎日飛び交っている日本文学史上最低・最高な日記文学であるように思われます――暗澹たる状況のなかで、毎日必死になっている筆者の不器用な生真面目さには心が打たれてしまうのです。性的な記述を求めて乙女ブロガーの日記などを読んでいる場合ではございません!本当にジリジリとした「生」を写す文章が読みたければ、いますぐ書店にダッシュしてこの本を買うべきです。
……「あんな奴みたいにはなりたくねぇ」「あいつにくらべりゃ自分はマシだ」みたいなことで読者に利用してもらっていることだけで、この日記の存在価値があると信じて頑張っていくしかない。というか、それを文章にして生活の糧にするより他に生きる術がないから仕方がないのだから。
ほとんどセリーヌばりのネガティヴさ/愚痴っぽさですが、ほとんど「悪口」というものが見受けられないのに好感を抱きます(ゴミみたいな音楽が溢れすぎている、という警鐘はありつつ、そこは共感できるところがあるので問題ない)。攻撃性はすべて内向きで(それはもしかしたら中原昌也が作る小説や音楽にも表れているのかもしれないけれど)、迷惑はかけても誰も傷つけていない……ように思える。
また、ほとんど紋切り型に語られる映画や音楽についてのメモ――「○○は最高だ」。これも素晴らしいと思う。こんなにシンプルな言葉を恥ずかしげもなく書けるところ、そこは信頼できるところかもしれないな、と感じる。
結局音楽に必要なのは演奏が上手いとか、楽曲がいいとか、オリジナリティがあるとかそんなんじゃないってことだ。
この一節を読みながら、必要なものは切実めいたものなかに存在するのではないか、と思う。そして、それはこの日記のなかにも存在していて、だからこそ、私はページをめくる手を止められないのだろう。