sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

オリヴィエ・メシアン作品映像集

Olivier Messiaen: Mélodies (Complete)
Olivier Messiaen Hakon Austbo Ingrid Kapelle
Brilliant (2005/09/27)

 最近、友達がオリヴィエ・メシアンの歌曲を歌って、見事コンクールで一位になった、というニュースを聞いてからメシアンの歌曲全集を聞き返しています(ブリリアントという廉価盤レーベルかれでているもので、2枚組で1000円ぐらいだったと思う)。あまりピンとこなくて放置してたんだけども、ちゃんと聴いてみたらかなり良い曲ばっかりでびっくりしました。友達は《ヴォカリーズ・エチュード》(1935年)という曲を歌ったらしいのだけれども、《ダフニスとクロエ》(ラヴェル)から神秘的な部分だけを抽出したような美しさです。こういう「再発見」があると結構嬉しいので、私の友達連中は私の家にあってあんまり聴かれてないCDのなかから選曲を行ってコンクールに出場して欲しい。

 全集のなかに入ってる曲がYoutubeにもあったので、一曲ご紹介。《ハラウィ――生と死の歌》というメシアンの声楽作品の中で最も有名な歌曲集から「Bonjour Toi, Colombe Verte」という曲。この映像で歌っている歌手もピアニストもしらないんだけれど、やけに爽やかに歌いきっている気がする。エロスが足りないですが、箱庭のなかで鳥が全開で鳴きまくっているような、窮屈さが面白いです。

 メシアンの作品に関しては以前にもいろいろ紹介してきましたが*1、またすごい映像が見つかったのでご紹介していきます。こちらは彼の歌劇《アシッジの聖フランチェスコ》という上演時間4時間以上(!)の大作より。これ、ずっと聴いてみたかったんで見つかってホントにびっくりしました。演奏は小澤征爾/パリ国立歌劇場管弦楽団、しかも1983年初演時のモノ。こんなの残ってるんですね……ちょっと生きてて良かった、インターネットは争いの道具じゃないんだ……って思いました。
 作品ですが、多くの作曲家がそうであるように、誇大妄想のごとく作品を巨大化させていく傾向をメシアンも踏んでいるように思いました。気が狂ったとしか思えない鳥の歌声の大合唱。音質が悪いせいもありますが、もはや構造的な聴取は不可能かと……。

 サイモン・ラトルベルリン・フィルによる《彼方の閃光》。この作品の冒頭で聴くことの出来る「一向に解決せず、上り詰めていくような和声進行」と「鳥の鳴き声を模倣したトリル音形」がやはりメシアンの特徴的な音なのでしょう(あとはリズム)。こういったメシアン独特の和音の動きを聴いていると「やっぱりこの人は教会オルガニストっぽいところがあるよなぁ」とか思います。曲の感じは全然違うけれど、ブルックナーにもそういう陶酔感はある(彼もまた教会オルガニストだ)。

 で、こちらがメシアンが60年以上勤めていた聖トリニテ教会のオルガンを使用した演奏。曲は《主の降誕》より「Dieu Parmi Nous」。メシアン自身がこのオルガンを使用した古い録音を持っているんだけど、録音状態が悪すぎて何弾いてるのかわからなかったのがこの映像で「おお、こんな音だったのか」と知ることができて良かったです。後半のテクニカルなパッセージの連続がすげぇ。こんな神様、降りてきて欲しくない。

 《嬰児イエスのための20のまなざし》より第6曲「御言葉によってすべては成されたり」。変拍子ポリリズムが入り乱れたフーガによって描かれるキリスト教世界の音楽曼荼羅、といった形容が相応しい名曲です。こういうの年に一回ぐらい爆音で聴きたくなります(もちろん通しで)。メタル的/中2的感性にもグッときて、思わずヘッドバンしたくなる。

 最後は《世の終わりのための四重奏》より最終曲。血の沸き立つような興奮とこの曲にあるような瞑想、この二面性がメシアンの魅力なのかも、とか思う。