7拍子の愉悦/ドラびでお
渚音楽祭の1日目に行ってきた。このイベントはチケットが安いので(2日券が4000円)会場内でダラダラしていても損した気分にならないことから、全然アーティストを観ないで酒飲んでダベったりしがちなのだが今日は観たい人たちがいたので、珍しく本気になって音楽を聴いてしまった。で、その本気で観たアーティスト/バンドが、山本精一のPARAと、ドラびでおのふたつ。
PARAは山本精一のなかに眠るプログレの遺伝子が、21世紀のダンサブルな文脈のなかで爆発してしまったおそろしいバンドであった。7拍子のフレーズがミニマルに反復され徐々に発展していくのだが、カンタベリー・ミュージックを踊れるバージョンへと変異させるような音にメロメロになってしまう。
「円を描く3拍子」+「上下に運動する4拍子」=「7拍子」――と考えると、7拍子も変拍子に聴こえないのだが、円と上下が高速で交互に来たときのギクシャクした動きは気持ちよい。音楽好きなら誰もが「ああ、こういうバンド/音楽があったら良いのにな」と妄想することがあると思うんだけれども、PARAは「私の妄想」が現実化されてしまった、ひとつの形でもある。こういうとき「ありがとう!山本精一!!」とか叫びたくなっちゃいますね。
あと最後にやった曲は少しテンポが遅い曲だったんだけれども、これがもう動けなくなるぐらいホントに綺麗で良かったです。山本精一のギターにものすごいディレイがかかっていて、空間のなかに音が広がっていく感じが素晴らしい。ブライアン・イーノがプロデュースしたU2のアルバムのイントロだけがずーっとその場に残っているみたいな――そんなの嫌いなわけないじゃないですか……。「最後まで聴いてくれてありがとう」と山本精一がステージを去る際に言ってたけれど、こういう音楽なら一晩中演奏して欲しいぐらいだよ。
ドラびでおは圧巻の一言。笑い死ぬかと思うほど壮絶なパフォーマンスでした。天皇陛下の世界陸上開会宣言の映像で始まり、冒頭からボルテージが最高潮に達し、その後も女子十二尺棒やらガンダムやら亀田やら……使ってる映像が最低で最高。ザクザクにカットアップされた映像の黒さも予想以上で、安倍晋三の「美しい国発言」に様々なポルノ映像(全部男優が中年サラリーマン)が繋げられている曲(?)の突き刺さるようなパンク具合といったら、ファッション・パンクを一掃する熱さである。あと「マツケンがサンバでNew Orderの『Blue Monday』を歌う」とか「大山倍達が氷柱だのビール瓶だのを叩き割りながら『ジンギスカン』を歌う」とか、思い出しただけでも笑える。
明日はスティーヴ・ヒレッジが観るのが楽しみです。