姜尚中『愛国の作法』
テレビで顔を知っていたけれど(そしてモノマネも出来るけれど)、著作に触れたことはなかった姜尚中の新書を読む。とても平易な文章で書かれた勉強になる新書だった。昨今、蔓延っている「日本人なら国を愛するのは当たり前」という愛国的態度を、知識人らしい理性的な洞察でぶった切っているところがとても気持ちが良い。
姜尚中が批判する(藤原正彦などがとる)「愛国」には、確固たる理由が存在しない。愛国するべき態度は全ては「日本人なら分かるはず」というたった一言の理由で片付いている。その排他性(日本のことは日本人以外には分からない、というような)を姜尚中は強く危険視しているのだが、これらは宮台真司・北田暁大の『限界の思想』で言及されるバカ右翼のバカさと通ずるものがあると思った。姜尚中・宮台から言わせれば、藤原正彦・石原慎太郎・小泉純一郎のメンタリティには「救いようが無いバカ」という共通項が存在するのであろう。
フロム、アーレント、そしてマックス・ヴェーバーなどが本書では引き合いに出される。カンサンジュンが彼らを召喚する狙いはとても適切なものに思われた。それは、アーレントはもちろんのこと、どれも全体主義への批判的まなざしが感じられるものばかりであるからだ。しかし、そのような批判が有効であるかどうかはよくわからないところである。批判が全く通じないからこそ、救いようが無いバカの救いようのなさが存在するのだから(言っても無駄かもしれない。しかし、こういうことはやっぱり誰かが言わなくてはいけないことだと思う)。