sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

Moodstock at GARB pintino

ニシヘヒガシヘ
ニシヘヒガシヘ
posted with amazlet on 06.09.25
本田祐也 チャンチキトルネエド
ラクターエンタテインメント (2005/09/07)
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 24日に知り合いが何人か参加している「《鍵盤文化+挑発的ブラス》による入り乱れる超速フレーズ、およびハイパービートのハイブリット・コンテンポラリー・ミュージック&パフォーマンス・オーケストラ」チャンチキ・トルネエド*1のライヴがあると聞き、久しぶりに観に行きました。会場は東京タワーの真正面にあるGARB pintinoというお店。イベントのメインアクトは田中邦和、沖祐市スカパラ)のユニット、sembello。場所が場所だけにオシャレベルが高く、取り澄ました顔で音楽を聴き、談笑などをされておりましたが、ビュッフェ形式で食べ物が出ると鬼のような形相で食べ物に群がる様子がなんとも浅ましくて素敵だ、と思いました。セクシーな黒いドレスを身に纏った女性が、デザートを求めて野獣のように大皿へ……という光景は圧巻。

 チャンチキ・トルネエドのライヴはいつものようにとても素晴らしかったです。メンバーが全員、東京藝術大学卒……という鬼のようなエリート中のエリート集団ですから、楽器を演奏テクニックはもう涎が出るほどに上手い。演奏する曲は「チャンチキ(チンドン)+クレズマー+ジャズ」みたいな感じで、高速フレーズが展開。さらに美男美女が揃っている……という最強っぷり。衣装は現在ユニクロとコラボレートしたことで話題の「シアタープロダクツ」が手がけています(素晴らしい衣装で完全武装したトランペットの佐藤秀徳さんが、『王子感』に溢れすぎて鼻血がでますよ)。音楽的な凄さで言えば「即興的に繰り広げられてように聞こえるフレーズが全て作曲家、本田祐也の手によって書かれたものである」ということ。まるで非エクリチュールの音楽であるジャズに対する西洋音楽からの挑戦のようにも思えます。本当にすごくカッコ良い。惜しむらくは、このような良いモノを書く作曲家、本田祐也さんがすでに鬼籍に入られていること。音楽は素晴らしく、楽しい気持ちにさせてくれるものなのに、チャンチキ・トルネエドのライヴに触れるたび、すごく悲しい気持ちになるのは、その点です。

 その後は、ラテン風味のクラブジャズバンドの演奏があり(ヴォーカルはUAみたい。こういうバンド、掃いて捨てるぐらい見かける気がする)、sembello。田中邦和のラインを通し、リバーブかけまくったサックスは、その前のラテン風味クラブジャズバンドのそれと全く同じものに聞こえてしまい「ああ、エフェクト使ったら楽器の上手いヘタなんて関係ないのだなぁ」と思ってしまいました。曲もなんかJ-wave(あるいは東京FM)っぽい感じの一切逸脱のない「ジャズっぽい音楽」で、全くのめり込めないで聴きました。全ての要素が収まるべくところに収まっており、まさにウェルメイドな感じ。「こういったものにはどうものめり込めないなぁ、なんだろうなぁ」と思いつつ会場を後にしました。