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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

少しだけ…報われた……

響きと怒り
響きと怒り
posted with amazlet on 06.09.23
ウィリアム・フォークナー William Faulkner 高橋正雄
講談社 (1997/07)
売り上げランキング: 18,331

 「中上健次が影響を受けた……」と聞きずっと気になっていたフォークナー。ひぃひぃ言いながらやっと読みました。私にとってフォークナーと言えば「ノーベル文学賞の作家」……というよりも元ジェリー・フィッシュのギタリスト、ジェイソン・フォークナーの方が親しみが深い、のはとてもどうでもいい話です。


 ヴォリュームもさることながら、大変複雑な「意識の流れ」で書かれているので結構読むのに一苦労。しかも、第1章の主人公は生まれながらにして白痴の男(虚勢済み)の意識から書かれているため、蘇る記憶も混ざってくるから20年近い長いスパンで意識があっちへいったりこっちへいったり。第1章ではおぼろげにしか何が起こったのか浮かび上がらず、あやうく匙を投げそうになりました。しかし、そのおぼろげで、断片的に浮かび上がってくる事実が第3、4章にかかってきて「おおー、ちょっと苦労して読んだのが報われた……」という感じがしました。見事な書きっぷり。単純に「うおー、すごいなぁ、これは」と驚いてしまう。


 ただ、出てくる主人公がどうにもろくでもない人間ばかり。第1〜3章まで南部の名家、コンプソン家の男たちの視点が取られていますが、第1章は前述の白痴の三男、第2章はあばずれの妹を庇うばかりに「俺は妹と近親相姦を犯してしまった」と妄想を抱き、狂って自殺する長男、第3章は強欲で性格がねじまがってる次男……と一人もまともな人間がいない。家で使われている黒人のおばさんの方がよっぽどまともに思えてきます。こういうのは正直、気が滅入って……。


 風邪ひいて寝込んでるときに読む小説ではないな、と思いました。体力があるときにフォークナーはまた読み直したい。