リヒャルト・シュトラウスを見直す
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1333445
ロシアのヴァイオリン奏者、ワディム・レーピンがワーナー・クラシックから出していたCDを一まとめにした10枚組ボックスを先日購入した。さすがにボックスセットを一気に聴くのは体力的にも辛く、っていうか同じ日にレオニード・コーガンのボックスも買っていたのでまだ全部聴けていない。っていうかまだ2枚しか聴いていない。色々書き残しておきたいことがあるんだけど全部聴いてからだと忘れてしまいそうだから、小出しにしていこうと思う。
今日はディスク3について。収録曲は以下。
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 op.18
ストラヴィンスキー:ディヴェルティメント
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
あんまり録音しても話題にならなそうな曲ばっかりのディスク。ボックスセットはこういう「単品だったら絶対買わないなぁ」ってCDまで付いてくるのが楽しい。私がこれを購入した理由は「レーピンのショスタコーヴィチが欲しくて」だったのだが(4年ぐらい探してた)10枚中1枚しか欲しいのがなくても随分得した感あった。というのもこのディスク3で自分のなかのリヒャルト・シュトラウス感が塗り替えられた思いがしたからだ。
リヒャルトと言えば後期ロマン派最大の作曲家。今ではマーラーの方が人気があるけれど、19世紀末から20世紀の始まりにおいてはリヒャルト・シュトラウスが大人気で、彼は音楽界の王様みたいに君臨していたらしい。作品は金管盛りだくさんの大編成で豪奢かつエロティックな主題を盛り込んだものが多い。そして長い。「派手、エロ、長い」とロマン派の権化みたいなオッサンだ。私はそのクドさがかなり苦手で、今まであんまり聴いていなかったんだけれど、このヴァイオリン・ソナタはすごく良い。ブラームスの中期の作品みたいな落ち着きと旋律の美しさがあり、聴いていて心が安らいだ。リヒャルトの持っている「趣味の悪い派手好きなオバサン」みたいなところが全然ない。どうやら彼がワーグナーに心酔する前に書いてたものみたい。
比較にブラームスを引き合いに出したけれども、ピアノとヴァイオリンの絡み方なんかが本当によく似ている。もっとも、ピアノの音数がパラパラと細かく、こういう伴奏の書き方はブラームスならしなかっただろうと思うけれど(ブラームスはもうちょっと落ち着いている)。良い曲だなぁ。レーピンの演奏もさすがオイストラフの楽器を受け継いだほどの腕前だけあって素晴らしい。録音時(2000年)は29歳とかなり若かったのに、油の乗り切った40歳のオッサンがモリモリと曲に立ち向かったみたいな充実ぶりが良い。この人もザハール・ブロン門下の一人ということは庄司紗矢香と同門。先生はオイストラフの弟子ということで、オイストラフ的なものを一番に継承しているなぁ、などと演奏から感じる。一度生で観てみたいなぁ。
現在はレーベルをドイチェ・グラモフォンに移してタネーエフ(ラフマニノフとかの先生だった作曲家)の作品集とか出しているみたい。ドイツものが上手そうな気がするので、やっぱりブラームスやベートーヴェンのソナタ集などを聴いてみたいところだ。