sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

癒しとゆらぎとブラシ

Explorations
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posted with amazlet on 06.07.19
Bill Evans Trio
Riverside/OJC (1991/07/01)
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 移動中に聴いている音楽がファンクだのジャンクだの現代音楽だのばかりだと少し疲れるてしまう。箸休め的に聴いたときのビル・エヴァンス・トリオの演奏はそれはもうびっくりするぐらい綺麗で「やっべ、涙出ちゃうよ」なんて。考えてみれば50年以上前に録音されたものなのに、瑞々しく感じられることってすげーよなぁ。


 私以外にも「癒されること」を目的として、ビル・エヴァンスのアルバムを聴くという人は多い、と思う。普段は「癒しなんか、クソ喰らえだ」とのたまっているけれども、なんだかんだ言って「良いねぇ…落ち着くねぇ…」と息を漏らしてしまう。首尾一貫しないのに「癒し嫌い」なのは、音楽の《意図》が「癒し」ではないだろう、なんて思うからだ。言っていることが自分でもよくわからないんだけれど「ビル・エヴァンスは聴衆を癒すためにピアノを弾いたわけではない」という風に考えたとき、そこで「癒されてしまう」というのは、音楽に対して真摯な態度とは言えないんじゃないか、とか思うからである。まぁ、「癒してやるぜー」なんて風に作られた音楽なんて聴きたいと思わないけど。


 まぁ、しかし実際的に言って、この音楽は「癒される」――しかし、何故癒されるのか!?


 この前とある人に、自然界には「1/fゆらぎ」というリズムがあることを教えてもらったんだけど、この「1/fゆらぎ」があると人間はどうやらリラックスしてしまうらしい。小川のせせらぎとか波の音とかにそのリズムが含まれているんだそうな。波の音、小川のせせらぎ。たしかにそれらは聴いていると落ち着く。


 で、この前ハッとしたんだよね(東武東上線の車内で)。「ポール・モチアンのドラムは『1/fゆらぎ』なんじゃないか!?」と。そう思ってしまったのは、ビル・エヴァンス・トリオでモチアンが多用するブラシと波の音にかなりの類似性がある気がしたから。特に『Waltz For Debby』の一曲目、「My Foolish Heart」のゆっくりとしたビートがさ(ほとんどノン・ビートに近いんだけれど)。「ビル・エヴァンスが癒しと繋がってるんじゃなくて、大切なのはポール・モチアンだった!」、全くの仮説なんだけどそれが言いたくて長々とエントリーを書いてみた。