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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

ヒラリー・ハーン/チャイコフスキー&ヒグドン:ヴァイオリン協奏曲

チャイコフスキー&ヒグドン:ヴァイオリン協奏曲
ハーン(ヒラリー)
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 ヒラリー・ハーンの新譜を聴きました。昨年はバッハ、その前の年はシェーンベルクシベリウスのアルバムを発表していましたから結構コンスタントに新譜を出していますね。先日彼女は来日もしていました。が、今回は聴きにいくことができず。今回の来日ツアーで演奏していたのも新譜に収録されているチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲だったようです。CDデビューから14年目。三大ヴァイオリン協奏曲のひとつにも数えられるこの有名曲をまだ録音してなかったんだ……というのは正直意外な感じがします。


 同時収録されているのは現代アメリカの女性作曲家、ジェニファー・ヒグドンが、ヒラリー・ハーンのために書いたヴァイオリン協奏曲。この人についてはよく知らないけれど「アメリカで人気がある」らしい。ヒラリー・ハーン曰く「この2曲を背中合わせにすると、21世紀はじめのヴァイオリンに開かれた、大きな音楽の可能性を感じることができるのです」とのこと。だけれど、この曲は正直退屈でした。いわゆる「新ロマン派」系の作曲家みたいなのですが、アメリカの吉松隆みたいです。しかも引用やパロディめいた部分がありませんので、吉松の音楽のようにニヤニヤしながら聴くこともできない。本当にこういう音楽がアメリカでは人気なのでしょうか?


 またチャイコフスキーの協奏曲についても、いまひとつパッとしない。シェーンベルクシベリウスの録音に感じられた才気みたいなものがこの録音にはない。テクニックはもちろん素晴らしく、随所に彼女らしい「考察」めいた表現があるのだけれど、それがうまく大きな結果として実を結んでいないような気がした。ちょっと残念。オーケストラの鳴りがリッチで、そちらは素晴らしかったです。