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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

シャイー指揮ゲヴァントハウス管/J.S.バッハ《ブランデンブルク協奏曲》全曲

Brandenburg Concertos
Brandenburg Concertos
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Ricardo Chailly Bach
Decca (2010-02-09)
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 HMVなどでは昨年に発売されていたようですが、公式の発売日は2010年2月9日ということですのでこれも今年の新譜に加えましょう。リッカルド・シャイーとゲヴァントハウス管によるバッハ・シリーズ第1弾は《ブランデンブルク協奏曲》の全曲です。第2弾の《マタイ受難曲》が素晴らしい出来であったことはすでにお伝えしたとおりですが*1、これも素晴らしいです。このバッハ・シリーズが本年のクラシック部門におけるベスト・ディスクに選出されることは間違いないでしょう。私も「そうそう、こんな生き生きとしたバッハが聴きたかったんだよ!」と大声をあげつつ大プッシュしたいです。


 《マタイ》と同様、シャイーはここでもピリオド奏法*2を採用しているのですが、この2枚の演奏は、これまでに私が聴いてきたピリオド奏法による録音とはまるで違った音楽を呈示しているように思われました。これは「ピリオド奏法」という言葉のイメージを書き換えられる体験です。古楽的なアプローチと言えば、枯れた音色ばかりをイメージしてしまっていたのですが、シャイーの録音はどこにも枯れたところがない。独奏ヴァイオリンのため息のようなフレージングでさえも瑞々しい。それから第5番のチェンバロがすごいです。この曲の第1楽章には長いチェンバロカデンツァがあるのですが、これがもう「チェンバロってこんな弾き方をしても良いの!?」と驚いてしまうぐらい情熱的な演奏。途中で長調から短調に移ってからなんかまるでイングヴェイ的に弾きまくっていて興奮が止みません。


 録音も素晴らしく、各楽器の配置の良さが伝わってきます。旋律の重なりによって、これが「さまざまな楽器のための《協奏曲》」として書かれていることがすごく意識できるような気がしてくる。この効果はもちろんフーガの曲でバツグンに発揮されます。そういった意味で第4番の第3楽章はこの録音のハイライトと言えるかもしれません。この曲、リコーダーの愛らしい音色も聴いていて楽しいですね。

*1:http://d.hatena.ne.jp/Geheimagent/20100130/p2

*2:作品が書かれた時代の演奏様式