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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』

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 初めてよしながふみの漫画を読んでみた。これはとても面白かった。序盤に隠されながら貼られてきた伏線のひとつひとつが、終盤になって浮かび上がり、ひとつひとつ回収されながら物語が閉じられる、この小さな世界内での完結のあり方が読んでいて、とても気持ち良かったです。


 カムアウトをおこない、自由に不特定多数と性交渉を結ぶ生活を送っている“魔性のゲイ”が作品には登場します。彼はその生活を楽しんでいる。しかし、その一方で満たされない思いを感じてもいる。永遠の安息を与えてくれるような、生涯を共にするような相手が見つからない。ここでは同性婚が認められていないなどの制度上の問題とまったく無関係に問題が発生しています。その彼の満たされなさは、もうひとりの登場人物――ヘテロで女性にもモテるが、結婚できない男――の満たされなさと対比されます。ここでふたりが対比されるとき、この間には「選ばれているが、選ぶことのできない男」と「選ぶことができるが、選ばれない男」という関係を見出すことができる。しかし、彼らふたりが抱えている孤独のようなものは、ほとんど同質なものと捉えることができましょう。このように、ゲイの孤独とヘテロの孤独、これらが本質的に同質なものであることを描いているのだとすれば、この作品は重要な作品だと評価することができる気がします。ゲイの人が読む場合、どのように感じるのか、についても少し気になるところです。