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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

MARTHA ARGERICH/The Collection 2

Collection 2: The Concerto Recordings (Box)
Martha Argerich
Deutsche Grammophon (2009-08-18)
売り上げランキング: 323

 もうすぐお盆休みになりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。私はといえば、お盆休み明けに大規模プロジェクトのカット・オーバーを控えているため、世間様の雰囲気などまったく感じられないまま、多忙な日々を過ごしており、本日も終電を逃してタクシー帰り……という季節感のない生活を送っております。神経を磨り減らすことも多いのですが、誰もいなくなったフロアにて好きな音楽を聴きながら、プログラム・ソースとにらめっこ……というのもなかなかオツなものです。嘘です。辛いです。ただ、音楽が何がしかの心の支えになっていることは本当です。本日はそのような心の支えとなる音楽を紹介させていただきます。


 上にあげましたマルタ・アルゲリッチのボックスは、いまや生きているピアニストのなかでは3本の指に入るであろう巨匠ピアニストの名演を集めた7枚組です。アマゾンだと3000円ちょっとで購入できてしまう、超価格破壊ボックス。何分枚数が多いので私もまだ聴ききれていないのですが、これはアルゲリッチの輝かしいキャリアをほぼすべて押さえることのできる素晴らしいコレクションと言えましょう。素晴らしいピアニストであることは私も重々承知でおりましたが、このボックスに収められた一枚一枚を聴き返しながら「こんなに凄かったのか……!」と惚れ直しております。


 とくに素晴らしいのは、クラウディオ・アバドロンドン交響楽団と組んだモーリス・ラヴェルのピアノ協奏曲。これは私が言うまでもなく、名盤のひとつとして数え上げられる録音なのですが、本当に素晴らしい。とくに第2楽章の豊かな情感は、仕事中聴いているとなんだか溢れてくる涙でソースがよく見えなくなるほどではないですか……! 私はこのような美しい音楽を聴きながら息絶えたい……と思うほどの絶品。


 また、このようなボックス・セットを購入することの楽しみのひとつに「ここに入っていなかったら、まず聴くことはなかっただろう」という作品と出会う、という偶然の楽しみがありますが、今回の作品ではフェリックス・メンデルスゾーンの《ヴァイオリンとピアノと弦楽オーケストラのための協奏曲》というのが私にとってのそれでした(ギドン・クレーメルとの共演)。こちらはなんとメンデルスゾーン、14歳のときの作品。この作曲家は38歳で亡くなってしまうのですが「天才早死説」を裏付けるような名曲であります。後期のモーツァルトとJ.S.バッハをお手本にしたかのようなフーガは、とても14歳のときの作品とは思えない堅牢さです。


 それからシャルル・デュトワ(元ダンナ)/ロンドン交響楽団と組んだチャイコフスキーの協奏曲も素晴らしいです。アルゲリッチによるソロは好き勝手暴れまくっている感じなのですが、それを包み込むオーケストラの広がりある音響に飲み込まれてしまいそうになります。