ガイウス・ユリウス・カエサル『ガリア戦記』
最近、徐々に自分のなかで歴史熱が再燃し始めているため、カエサルによる『ガリア戦記』を。さすがに2000年ぐらいの歴史がある本だけあって、とても面白かった。一説によれば、この本はカエサルが毎年戦地からローマの元老院に向けて書き送った詳細な報告書がもとになっているそうである。この報告書が元老院のなかで熱狂的な評判を呼んだことが発端で、カエサルが本にまとめたのではないか、とのこと。確かに文章は簡潔で、ほとんど装飾といったものがないところに報告書っぽいところが見受けられる。
紀元前50年ごろの戦争で、すでに1万人単位で人が動いたことを知って「昔から戦争って大変な出来事だったんだなぁ……」と思った。移動手段も基本は徒歩なので、必要がある場合は一晩中歩き続けなければならない。自分なら絶対嫌だなぁ、とか思う。カエサルのガリア遠征は7年にもおよんだというから、これだけ長いあいだ兵士をまとめていたカエサルという人は、軍人としても政治家としてもホントに優秀な人だったのだろう。カエサルが戦場に現れただけで、味方が盛り返したり、敵が逃げていったりするのも、なんとなく理解できる。
あとは途中に少しだけ出てくる、ガリアとゲルマニアの風習や、その土地の珍しい動物情報も面白かった。特にゲルマーニー人は、生まれてから「いちばん長く童貞を守っていたものが絶賛される」らしい。ゲルマーニー人は「20歳前に女を知るのは恥としている。このこと*1については少しも隠し立てしない」のだ。カエサルがどうしてこの文化を伝えようとしたのかはよくわからないが、いつの時代もこういう話はウケてしまうのかもしれない。
珍しい動物では、アルケース*2というのがいる(どうやら山羊に似た生き物らしい)。
こいつは倒れると自分で起き上がることができないそうである。なので、寝るときは横にならず、木にもたれかかって眠る。猟師たちはアルケースたちが寝床にしている木をみつけると、その木を根っこから引っこ抜いて、グラつくように地面に戻しておくらしい。そうすると、夜になって寝床の木にもたれかかった瞬間に、アルケースは寝床もろとも倒れてしまい、朝になるとその地点でもがいているのが見つかる――そんな賢くない野生動物がいて良いのか……と呆れてしまうが、山羊っぽい動物が起き上がれずにもがいている姿を想像したら、とても楽しい気分になった。
岩波文庫版はかなり古い訳だけれども、読みにくいことはなかった。部族名や土地の名前がたくさん出てくるので、最初のほうに載っている地図のページに付箋を貼って読むと良い(カエサルがどのあたりで戦っていたのか、よくわかる)。