Caetano Veloso/Zii E Zie
カエターノ・ヴェローゾの新譜を聴く。すでにid:mthdrsfgckrさんがレビューを書いておられるが*1、これは私も名盤だと思う――しかも「ここまでクオリティの密度が高いポップ・アルバムを聴くのは、ちょっと久しぶりかもしれない……」と恐れおののくレベルで。
この『Zii E Zie』というアルバムは前作『Ce』と同じ体制(プロデュースはペドロ・サー&モレーノ・ヴェローゾ)で制作されたアルバムなのだが、前作とはかなり趣は異なっている。喩えるならば、前作が「カエターノ・ヴェローゾがオルタナ・ロックをやったらどうなるか」と模索した野心作であるのに対して、今作「オルタナ・ロックでカエターノ・ヴェローゾの音楽をやったらどうなるか」を模索する野心作、とでも言えるだろうか。非常に刺激的な音に満ちているのにも関わらず、異様に自然で爽やかな聴き心地が素晴らしくハマっている。
(↑アルバムの一曲目を飾る『Perdeu』のライヴ映像)
楽曲は多彩でありながら、サウンド・メイキングは実にシンプルで、ドライと言ってしまっても良いぐらい無駄の無い作りになっているのだが、ギターがあり、ベースがあり、ドラムがいる(たまにフェンダー・ローズが入る)という非常にオーソドックスなバンド編成でここまで聴かせられるのが驚異的な感じもする。やはり演奏が無茶苦茶上手い。特に艶やかなカエターノ御大のヴォーカルに花を添えるペドロ・サーのギターが今回も素晴らしい――決して饒舌に前に出てくる感じではないのだが、彼がソロで聴かせるスモーキーなファズや、フィードバック・ノイズに痺れてしまう。
なんとなく思い出したのは、ウィルコの『A Ghost Is Born』で「オルタナMPBがここに完成した……!」というような妄言のひとつも吐きたくなってしまう。来日したら是非とも体感したいものだ。