sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

DRAGONFORCE『Ultra Beatdown』

 「速い!上手い!ダサい!」と三拍子揃ったイギリスのメタルバンド、ドラゴンフォース(このバンド名どうだ!って感じだよね!!)の新譜が出ています。2003年にメジャーデビューを果たしてから4枚目のアルバムとなる今作も正直、以前に出ている楽曲群とどこが違うのか、ギターパートを差し替えているだけな錯覚を起こしそうな感じですが、やはりこの暑苦しさは最高。とくに小節線の間を真っ黒に埋め尽くしそうなブラストビートには惚れ惚れしてしまいます……。

 「ヴォーカルの声が高ければ高いほど良い」、「ギタリストがソロを速く弾ければ弾けるほど良い」、「ドラムの手数が多ければ多いほど……」と体育会な尺度によって評価されることもあるメタルというジャンルにおいて、その特性を極限まで特化させたのがこのバンドなのだと思います。この点はとても興味深い。メタルの伝統的な記号を取り込んで、ほとんどギャグとして消化できるレベルまでもっていくことに成功したのは、このバンドが唯一と言っても良いと思います。それは、ヘヴィメタからヘヴィロックへと(古典からモダンへと)鮮やかな転身を図ったメタリカとは対照的な姿でもあるのです――また、それはスリップノットとも正反対の方向性を示している。
 ちょうどスリップノットドラゴンフォースは同時代的なバンドなのですが、前者がメタルをモダンの文脈によって革新的に再解釈しようとしているのに対して、後者はあたかも保守を貫き通すことによってメタルに延命処置を与えるばかりか新しいステージに立たせようとしているように思えてなりません。