坪口TRIO+2@新宿ピットイン
- アーティスト: 坪口昌恭
- 出版社/メーカー: ewe records
- 発売日: 2006/01/20
- メディア: CD
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今、東京には色んなジャズの「形」がある。未だにバップをやっている人もいる。未だにフュージョンの人もいる。未だにフリーの人もいる。時間が止まっているかのような状態で(それ自体は悪いことではない)ジャズが演奏されている一方で、新しい「ジャズ」を生み出そうとする人たちもいる。例えば、「音響派」と「ジャズ」を組み合わせたジャズ。あるいは、70年代マイルスの音楽をよりソフィスティケイトしたジャズ(・ファンク)。坪口TRIOのスタイルもこの「新しい方のジャズ」に分類されるだろう。
だが、坪口TRIOの「新しい方」のなかでの存在感というのもかなり独特だ。一聴して、かなりオーセンティックなジャズ、特にフリー以降の「新主流派」的な、フォーマットが敷かれている。目新しいものは特に存在しない。NUMBが客席の一番後ろで機材を操作し、リアルタイムでピアノの音を変調させていたとしてもその「ジャズ的」な形は揺るぎない。この「揺るぎなさ」が、大友良英や菊地成孔の「ジャズ」とは大きく異なっているように思える。もっとも、大友のジャズは「時代と共に変容する音楽」として、また菊地のジャズは「セクシーで高級な音楽」として、共にジャズ的ではあるのだが。
坪口TRIOのジャズはまるで「ジャズの巨人」が、現在のトレンドと遊んでいるかのような、そういう印象を受ける。エレクトロニクスなどの機材面においても、ポリリズムなどの音楽的な語法においても。もしかしたらハービー・ハンコックやチック・コリア、それからジョー・ザヴィヌルが30歳若かったらこういう音楽をやっていたかもしれない(でもキース・ジャレットはそうしなかったろう)……そういう想像力が働く素晴らしい音楽だった。
Masayasu Tzboguchi(MySpace)