sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

この未来っぽいハリボテ感が好きだ!


 映像はアンダーソン・ブラフォード・ウェイクマン・ハウ(ABWH)による「Order of the Universe」。駄目PV絡みで80年代のポップ・ミュージックの映像を探しているなかで再会した、80年代感溢れるプログレ・ソングです。曲名を直訳すれば「宇宙の秩序」ですけど、はっきり言ってスケールがデカ過ぎです。

閃光(紙ジャケット仕様)

閃光(紙ジャケット仕様)

 バンドのメンバーは、イエスを脱退した人たち。発起人であるジョン・アンダーソンは元々バンド名に「イエス」を使おうとしたそうですが、当時まだ解散していなかったイエス本隊(といってもオリジナル・メンバーはベースのクリス・スクワイアのみ)との間で裁判沙汰となり、こんな長ったらしいバンド名になったのでした。歌っている人には全く秩序はなかった、というオチ。あと、この曲をオープニングに使っていたニュース番組がかつて日本に存在していたと思うのですが全く番組名を思い出せず、4年ぐらいノドの奥に疑問がつっかかったままです。
 ビル・ブラフォードの周囲に曼荼羅のように配置されたエレドラ、「5分弱に4曲ぐらいの違う曲を詰め込んだんじゃないか」と思うほど強引な展開、そしてジョン・アンダーソンの反復横とびアクション。どこをとっても最高な畸形感を演出しておりますが、全体的にやっぱり「未来っぽさ」が漂っている。しかも、その雰囲気も、スケールのデカさと同様にすごく胡散臭い。こういうバカみたいな胡散臭さが80年代の象徴だと思う。1989年(80年代最後の年)に発表されたこの曲は、その虚構性の極致点にさえ思えてきます。
 90年代から現代にかけてのポップスにはこういう「サウンドの嘘っぽさ」を感じません。別にそういう流れをリアルタイムで感じていたわけではないけれど、そういう(虚構の未来を志向しない)「自然体な音」を聴いているとなんかノー・フューチャーな悲壮感を時々感じてしまうことがある。私がニルヴァーナに一瞬もハマれなかったのは、そういう点にあるのかも知れません。現実なんていつだって最悪なんだから、音楽聴いているときぐらい夢を見させてくれよ、とか思う。