sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

G.W.F.ヘーゲル『精神現象学』(上)

精神現象学上 (平凡社ライブラリー)

精神現象学上 (平凡社ライブラリー)

 2週間以上かかって半分読み終える。「まったくすごく大変な本を読み始めてしまったな……」というのが今のところの感想で、何一つ内容がつかめないという自信だけがある。世間で言われている「難解な本」、例えば、ルーマンとかアドルノとかを読んできたけれど、これはそれらとは難しさの質が違う。ルーマンアドルノが含む「難解さ」は独特の言い回しや他領域から借用してきた概念に起因しているように感じるけれど、ヘーゲルにはそういうのはない。むしろ、一文一文はそんなに長くないし、文章も簡潔で、素朴に書いてある。だから、「とりあえず」読めてしまう。
 けれども、読めるからと言って内容が汲み取れるわけではない。不思議と、さっき読んだはずの文章の断片的な意味が、つぎの文章にいくとサッと消えてしまっている。なんっつーか、あまりに素朴過ぎて留まっていかない……というか。サーッと流れていく。そして、ものすごく眠くなる(自分史上最強の催眠効果を持った本でもあった)。
 アドルノヘーゲルの思想に対してベートーヴェンの音楽を布置していたけれども、ちっともベートーヴェンにならなかった。アドルノが「ヘーゲルは難解」と書いているのを読んで「アンタだって充分難解だよ!」と思ったけれど、この質の違った難しさを前にして「これがベートーヴェンになるには10年ぐらいかかりそうだ……」と思った。今のところ、アルバート・アイラーみたいに響いている。素朴な感じに始まって、いつの間にか訳が分からなくなっているところとか。
Spiritual Unity

Spiritual Unity

 というわけで、アイラーを聴きながら読んでみたのだけれど「このベース、ゲイリー・ピーコックだったのか!!」という全然関係のない驚きがあった。ヘーゲルを、アイラーからヴェーベルンを挟んで、ベートーヴェンへ……と導けたら良いのだけれども、何かヒントになる本があったら教えてください。