続・夕陽のガンマン
エンニオ・モリコーネって涙腺を緩ますような綺麗なメロディばっかり書く人だとばかり思ってたんだけど「本当は全然ちがくて結構《前衛》の人だったんじゃねーの……?」と思ってしまった(ちなみに作曲の師匠はペトラッシというイタリアの20世紀音楽の第一世代に位置する人だ)。『夕陽のガンマン』のテーマ曲よりも、『続』はハードな色合いが強くて、っていうかいきなり野犬のようなシャウトですごいのな……。ギターもなんかプログレみたいで、PFMよりもアレアっつー感じ。実際70年代にはモリコーネっていくつかのプログレバンドと組んでオーケストラ曲書いたりしてるので「モリコーネ=プログレ説」も間違いではない。
というのは、ただ「プログレ」って言いたいだけなんだけど、悪人を演じるリー・ヴァン・クリーフ*1が人を撃ち殺すシーンで流れる音楽にトーン・クラスターが盛り込んであって「早いなぁ」と普通に驚かされる。あと、リー・ヴァン・クリーフが傷ついた南軍の砦に行くシーンの音楽は、遠くの方で鳴っている騎兵隊ラッパの使い方がすごく良くて泣ける(マーラーが書いた交響曲第1番の「舞台裏で演奏されるトランペット」みたいで)。この部分、この映画のサントラで数少ない「美しいメロディが聴ける曲」だと思う。あとは、北軍の捕虜収容所で捕虜が演奏している曲が演出と絡まってすごく良いんだよなー。
名作映画なので中身に関して何も言うこと無いんですが、マカロニウェスタンっつー高い娯楽性のなかに反戦メッセージみたいなのも盛り込み……って言うのは、なんかゾンビ映画でブッシュ批判!みたいなノリを思い出してしまって「すげー」とか思いました。『夕陽のガンマン』より火薬ドカンドカンいってて、イーストウッドがギャグみたいに大砲とか撃つもんだから爆笑しちゃうんだけど、この過剰な火薬量はやっぱりベトナム戦争と重なります。映画公開の前年、1965年は北爆開始の年でもあります。そのあたりを考えると『荒野の用心棒』、『夕陽のガンマン』という前2作は(歌謡性の高さから)PFMであり、本作品はアレアだ、ということができるのではないでしょうか。嘘だけど。
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表現のなかに政治を盛り込むイタリア系アーティストでアレアしか思い浮かばない自らの想像力の貧困さを嘆くべきですが、混沌としたインプロヴィゼーションから「インターナショナル」へと流れ込む怒涛のライヴや「Arbeit Macht Frei(労働、権力、自由)」という曲タイトルの「赤さ」が強烈過ぎるのです。
*1:この役者、すごく好き。長いストックと長いバレルの拳銃が良く似合う、と思う