sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

水墨画のような幻想

 日本的な私小説ギリシアやヨーロッパの神話的なイメージが重ね合わさったときの「つかめなさ」がとても興味深い小説。一応、「幻想小説」の部類に入るようだけれど、すごく特殊な印象を抱いた。神話世界のモチーフによって、描かれる世界観は彩り鮮やかなものになるのかと思いきや、小説本来の私小説性というか土着性にそれが吸収されて、水墨画のような不思議な夢模様が描かれている感じである。しかも、力強いところと繊細なところが点在しているような……。

 牧野信一は謎だ。日本にこういう作家がいたとは……。