方法音楽の集成
中ザワヒデキ音楽作品集posted with amazlet on 06.12.07
「方法主義」を提唱する美術家、中ザワヒデキの音楽作品をまとめたCDが出ている。曽我部清典、足立智美、高橋悠治などが豪華なアーティストが参加しており、非常に内容も濃い(1つ1つの作品は短いものが多いが、49トラックも収録されている)。
初めて「50音音楽」という言葉を聞いたとき、現代音楽を熱心に聴いている人なら「1オクターヴを50に分けた微分音派の作品か?」と想像するかもしれない。しかし、中ザワヒデキの「方法音楽」において示されるその音楽とは「日本語の50音による音列作品」だ。そこでは日本語の50音が重複しないように配列され、一つ一つの音が平等に取り扱われる……というまるでアーノルト・シェーンベルクのパロディのようなものが展開されている。
50音音楽で音列として生成される「言葉」は、全く意味をなさない。けれども、その響きが単に音として面白く、発音された瞬間になんらかの「意味的なもの」が発生してしまう不思議さについて考えさせられてしまった。特に《50音モノフォニー第2曲》での足立智美の言葉が走り抜けるような怪演がすごい。
50音音楽にしてもそうだが「何故今まで誰も考えなかったんだろう!」というシンプルな驚きに満ちた作品集。足立智美ロイヤル合唱団の『ぬ』と一緒に聴いてもらいたい一枚。