音楽の化身、カルロス・クライバー
素晴らしい動画が見つかったので、喜び勇んでご紹介いたします。カルロス・クライバー指揮/アムステルダム・ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるベートーヴェン交響曲第7番(第4楽章)の映像です。ワーグナーが「舞踏の聖化」と讃えたように、クラシック中最もダンサブルな曲の一つ(他にはストラヴィンスキーの《春の祭典》がノミネートされるでしょうか)ですが「音楽の化身」ことカルロス・クライバーはこの曲に同化するような指揮ぶりで聴くものを魅了してくれます。超エキサイティング。3:57あたりで指揮棒を完全に止めてしまう……という信じられないアクションもまたすごい(そのときのクライバーは天真爛漫な笑顔)。この映像はカール・ベーム追悼演奏会の模様でしょうか。
ベートーヴェン:交響曲第5&7番posted with amazlet on 06.11.02
ウィーン・フィルを振った録音も素晴らしい。はっきり言って「正統派」の演奏からは3光年ぐらい遠い解釈だけれど、こんなに辛気臭くないベートーヴェンは他に無いので大好きです。映像を観れば分かるように、本当に音楽を演奏する歓び(月並みな言葉ですが)というか、ポジティヴな力を発散しまくってる人で「天才!」としか言いようがありません。
(こちらは同じコンビによるベートーヴェンの交響曲第4番の1楽章)「天才」と「変人」とは紙一重、むしろ才能があればあるほど奇行が多い音楽界。カルロス・クライバーにもそういったエピソードがたくさんあります。例えばセルジュ・チェリビダッケ*1に対して、とっくに死んでいる大昔の指揮者トスカニーニの偽名を使って抗議文を送り、その後天国のトスカニーニ対チェリビダッケの論争を新聞上で展開したり、気に食わないことがあったら速攻でコンサートをキャンセルしたりしています。「アイドル指揮者」のような存在になってからは極端にステージの回数を減らし、年に3回ぐらいしか舞台に立たないというひきこもりっぷりも発揮(それでも人気は不動)。
カルロス・クライバーは、1999年の舞台を最後にして結局5年間「いつ、クライバーは戻ってくるのだ」とファンを待たせたまま2004年に亡くなりました。今になると「ああ、なんかシド・バレットみたいだな」とか思います。クレイジー・ダイモンド。
Brahms: Symphonie No. 4 / Carlos Kleiber, Wiener Philharmonikerposted with amazlet on 06.11.02Johannes Brahms Carlos Kleiber Vienna Philharmonic Orchestra
Deutsche Grammophon (1998/05/12)
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哀愁漂うブラームスもクライバーのタクトにかかれば、怒涛の情熱に変わります(ヴァイオリンがピッチカートからボウイングに切り替わるところのメロディが最高)。のだめカンタービレの千秋様もこういうタイプの指揮者だったほうが面白いのになぁ。