仏文はエロいという幻想を打ち破るために
「フランス文学はエロいイメージだ」と言ったら大概の人には「あー、たしかに」と頷いてもらえる気がしますが、私の経験上にでは「イタリア文学のほうがエロい!ボッカチオとか!!」と反論する人もいました。確かに考えてみれば「仏文=エロい」というイメージは、バタイユなどと直結しておりフランス文学の歴史のなかで非常に限られたものでしかありません――「じゃあ、古典を読んで検証しようじゃないか!」と思い、モリエールを読んでみました。
ふっと柔らかい気持ちになる喜劇。『いやいやながら医者にされ』というタイトルの秀逸さから既に心をつかまれてしまうところがありますが、基本的な笑いの構造は17世紀の時点で完成されていたのではないか、と思わされるほど面白い。「のんだくれで甲斐性なしのオッサンが(女房の策略によって)医者にしたてあげられて……」というあらすじ。『男はつらいよ』にも転用できそうな感じでもあります。素晴らしい。
エロいかどうかについて言えば「ややエロ」。主人公のオッサンは医者として連れて来られた家にいたキレイな女の人に「どれどれ、この人も具合悪いかもしれないから、診察します。おっぱい見せてください」などと騙るところなど非常にオッサン的なエロが一部で満開です。定期的にこういうオッサンが逮捕されますよね。「お、アナタ、悪い霊がついておる……霊視しますから服を脱ぎなさい」みたいな。