sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

BPM74のワルツ(イメージ)

 3巻目に入って、だんだん面白さを増してきた感じ。「語り手」の暴走する妄想力が素晴らしくDT。19世紀のみうらじゅん、と言ったところでしょうか。全くロマンが欠けた表現ですけれど。最高です。あとは、語り手が超憧れてた作家がいて、その人の書く小説に自分が書くものもむちゃくちゃ影響受けてるんだけど、会ってみたら「うへっ、結構コイツ俗っぽいぞ」なんて気がついてしまったりするのも中二病的でよろしい。それまでアイアン・メイデンとか北欧の速弾きギタリストマンセーだった中二が、イエスとかキング・クリムゾンとか聴いてぶっ飛んで「アイアン・メイデンなんてクソだよ」とか言い出すのにも似ている(それは俺だけど)。


 いつものようにどうでも良い感想を書き綴ってしまいましたが、人がどんな風に本を読んだって勝手でしょ、と自己弁護。P145-146とか爆笑ものですよ。好きな女の子とじゃれあってるうちに「つい快楽をもたらしてしまった」というところね。触られただけで射精してしまいました的な(そこまで露骨に書いてないんだけど)。特に「つい」というところが良いです。予期せずして…と。


 「語り手=DT」という曲がった解釈はさておき、大変音楽的な比喩表現が多くて面白いです(『プルーストを聴く』という本が出ていますが)。知っている固有名詞も出てくる。19世紀末を知っているフランスの音楽家といえば、マルグリット・ロン、アルフレッド・コルトー、ジャック・ティボーの名前が思い起こされる。彼らはプルーストとほぼ同年代だから、もしかしたらプルーストがロンのモーツァルトや、コルトーとティボーのフランクを聴いていたりするのかもしれないなぁ、と想像すると楽しい。


 文章の流れのイメージは、BPM74ぐらいのワルツな感じ。読んでいてそのリズムに乗ってくると体が文字の中に溶け込むように読める。