荒木飛呂彦 『ジョジョリオン』#1
『ジョジョの奇妙な冒険』第8部「ジョジョリオン」の舞台は第4部の舞台となった杜王町。だが、第7部の「スティール・ボール・ラン」と同様に第6部以前の物語とはパラレルな世界での話となる。
第6部のクライマックスで「世界が一周し」、第7部では複数次元の平行世界を行き来するなど、ジョルダーノ・ブルーノ的(主人公の武器が無限の回転!)というか、量子論的というか、とにかく大変なことになっている、としか言いようがない世界でストーリーが展開されてきた。第8部の冒頭では、「3月11日」に大地震が起きたことが示される。杜王町(宮城県仙台市青葉区がモデルとなっている)の地面は隆起し、奇妙な「壁」が現れる。この壁については、今のところ、善悪の評価がされていないが、第8部の舞台が物語外の現実と密接な平行世界であることが示される。
第7部の途中から『ジョジョ』は月刊連載に変わり、振り返ってみれば変更直後は物語のペースと刊行ペースとの足並みが揃わない感じで緊迫感にかけた展開が続いていたように思う。それが終盤、密度と緊迫感、そして設定の難易度がどんどん高まっていき、以前の荒木飛呂彦のパワーへと完全に復調して最後を迎えた。そして、この第8部では完全復調状態のまま謎の多い物語の冒頭を駆け抜けている。第7部での移動しながらの闘いという新しい試みから、第4部で描かれた密室での闘いへの回帰も「やっぱり、荒木飛呂彦はこれなんじゃないか」と思わせるものだ。
主人公のスタンド使いが、トマス・ピンチョンに似ていること。荒木飛呂彦がどうやら「テンドン」という古典的な喜劇の手法を覚えたらしいこと。気になる点は盛りだくさんだが、新しい物語が始まったこと、それがとても面白いことが嬉しくて仕方ない。早く続きが読みたいィィィッ!