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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

野口晴哉 『整体入門』:独自の生命論にもとづく身体の解説が面白い

整体入門 (ちくま文庫)
野口 晴哉
筑摩書房
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肩こりなどはシステムエンジニアの職業病というよりもオフィスに勤める人全般を悩ませる現代病、と言えましょう。私も極度の肩こり持ちなもので先日ついに近所の整体にいってみてみました、ものは試しに、と。で、これが上手いこと効いちゃったわけで久しぶりに体の軽さを感じる結果となりました。とはいえ、肩こりが永続的に解消されたわけではなく、術後1ヶ月もすれば「あ、いまちょっと疲れが溜まってきたなあ」という感じがしてくる。しかし、術前は肩が常に重かった・痛かったわけなので、この疲れが溜まってくる感じすらも新鮮。様子をみて通ってみようかな、整体すげーな、と思いました。


というわけで野口晴哉の『整体入門』を読んでみる。読んでから知ったのだが、整体にも種類や流派がいろいろあるそうで、私の行っているクリニックとはほとんど野口整体は無関係の模様。ただし「ゆるめて・ほぐす」などの過剰や不足を調整していくというコンセプトは共通しているみたいで、大変興味深く読みました。クラシックの熱狂的ファンで、日本発の天才ヴァイオリニスト養成術、鈴木メソードの考案者とも親交があったという野口晴哉(今年生誕110年)は教養高い人だったようで、文章がとても上手い。古い日本人にあるような格式高い日本語、ではないのですが、良い感じに力の抜けた風流人のごとき風情でちょっと真似したくなりました。


ここ数年、東洋の身体論、武道の身体論に注目が集まっているところで(今はそうでもないかな?)、過去に読んだもののなかでは『FLOW――韓氏意拳の哲学』はとても面白かったんだけれど、この『整体入門』もまたそのような身体論としても読めます。各部位の筋肉(筋力)によって部分を統御していき、その建築的な組み合わせによって身体を考えている、ように思われる西洋の身体理論とは違った考え方として。前述の韓氏意拳という武道においては、そうした身体理論さえも投げ捨てられてしまう、という脱構築武道ですけれども、伊藤整体においては「ねじれ」や「気の過少」といったタームが全体へと繋がって描かれる。椎骨が身体のコア部分となって、全体を統御する、といった感じにまとめられるでしょうか。実践方法の解説を見ながら自分ひとりで試す勇気はありませんが、身体に対するひとつのアプローチを見ることができると思います。