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2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

ジョルジ・ベンが熱いんだ!

サンバ・エスケーマ・ノーヴォ
ジョルジ・ベン
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サンバ・ホッキ(Samba Rock)のパイオニアとして高い評価を得ているジョルジ・ベン。彼の名前はジルベルト・ジルとの共演盤*1で初めて知りましたが、ジョルジ・ベンとジルベルト・ジル、双方ともにアフリカ系ブラジル人でありながら進んだ方向がまるで違うところが面白いと思います。ジルベルト・ジルは70年代後半からレゲエを取り入れたりするんですけれども、ジョルジ・ベンのほうはファンクの方面にいく、というこの違い。どちらも黒い方向に向かうのですが、まず邦楽からして違うわけです。しかし、そのように彼らが自身のルーツへと歩みを進めるのは70年代になってからの話。ジョルジ・ベンのデビュー盤となった1963年の『Samba Esquema Novo』(「サンバの新しい体制」という意味)を聴くと、その後に彼が進む道とはまるで違ったブラジリアン・サウンドが展開されます。彼にしても、ジルベルト・ジルにしても、ミルトン・ナシメントにしても、アフリカ系ブラジル人の歌い手ですが、とくに歌い方には「黒っぽさ」というのは感じられない、と思うのですがどうでしょうか? むしろ、「黒っぽい歌い方」「黒っぽい声」とは、人種的なものよりも言語に依存するのではないか、と考えてしまいます。なお、このアルバムに収録された「Mas Que Nada」は、セルジオ・メンデスによる演奏が有名ですね。ソラミミにも採用されています。

アフリカ・ブラジル
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ジョルジ・ベン
マーキュリー・ミュージックエンタテインメント (1998-11-26)
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さて、時代はいきなり1976年に吹っ飛びまして『Africa Brasil』へ。もうこのタイトルからお分かりの通り、この時点でジョルジ・ベンの趣味・趣向はブラジルとアフリカをつなぐ方向を目指している。かつ、このアルバムにはヒット曲「Taj Mahal」も収録されている。アフリカ、ブラジル、インドがひとつのアルバムのなかでつながる! というとんでもない世界観にびっくりしてしまいますね(「Taj Mahal」の演奏は、前年のジルベルト・ジルとのアルバムでの10分を超えるバージョンのほうがずっと良いんですが)。ねばつくようなリズムと、鋭角的なブラジリアン・パーカッションとのコントラストが素晴らしいのですが、これを聴いてるとスライやJBの影響のすごさを改めて感じてしまわなくもないです。しかし、ジョルジ・ベンの黒さとはスライやJBのように煽情感をフルスロットルにしているわけではない。同じ《黒人》なのに? そこには、大いなる差別的な誤解があるでしょうけれど、そうした疑問や不思議のなかにブラジルの奥深さがあるのだと思っています。

1979年の『Salve Simpatia』(なんてこった! アマゾンにジャケット写真がないじゃないか! このアルバムのジョルジ・ベンのものすごい性豪っぽい感じの顔を観ていただきたかったのに!!)になると、サンバ・ホッキの作風はかなり確定されてきている感じ。もうこのアルバムは一曲目からギターのカッティングからはじまるんですけれど、そのコード感は一聴すると「これはサンバなのか? ファンクなのか?」というのがよくわからない。しかし、そのよくわからなさが素晴らしい、という。しかし、このブラスの入り方やざっくりと色男方面へと転身しているのには、ジョニー・ギター・ワトソンとかあのへんの過剰なエロ黒があったりするんでは? と想像してしまう(それぐらいこのアルバムのジャケのジョルジ・ベンはギラギラしてるのでGoogle画像検索Now!!)