sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

「夜の現代音楽講習会 今夜はまるごとシュトックハウゼン」開催予告!

<ザ・スコープ>はヨーヨーダイン工場の電子機器の組立て作業員の溜まり場だった。外側の緑色のネオン・サインは精巧にオシロスコープ管の画面をかたどったもので、そこには限りなく形を変えるリサジュー図形の踊りが流れている。この日は給料日らしく、バーの中は、だれもがもう酔っぱらっているようだった。(略)とつぜんバーの向こうの端にあるジューク・ボックスのようなものから、ウーだの、イーだのという音のコーラスが響いてきた。だれもが話をやめた。バーテンが飲みものをもって、忍び足で戻ってきた。
「どうしたの?」とエディパは小声で言った。
「あれはシュトックハウゼンの作品」とクールな灰色の顎ひげが教えてくれた(トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』より)

CDは売れなくなり、モラルの欠如した音楽データの違法コピーが蔓延し、レコード店は次々に潰れていく一方で、リスナーの趣味は細分化し続け、今や隣の席のあのコのiPodに何が入っているかも想像できない状況。持ち歩ける音楽の量ばかりが増えていきつつも、孤独にさいなまれたリスナーの意思は140字のつぶやきへと志向する……。


21世紀に入って音楽をめぐる環境は、めまぐるしく変化し続けています。しかし、その一方であまり変化を受けていないジャンルも存在します。その最右翼たるのが現代音楽でしょう。1966年にピンチョンが夢想したシュトックハウゼンが流れるバーは、45年後の現在も存在せず、現代音楽は今もコンサート・ホールと、好事家が所有するスピーカーやヘッドフォンでしか聴くことができません。ベートーヴェンモーツァルト、バッハ……といった「クラシック」は喫茶店でも聴けるのに、現代音楽はまるで現代の音楽ではないように、限られた環境でしか聴くことができません。


実際にシュトックハウゼンがバーで流れると、一体リスナーはどうなってしまうのだろう? そして現代音楽はこれからも限られた場でしか聴くことに適さないのか? 「夜の現代音楽講習会」はそうしたシンプルな疑問から考案された企画です。当イベントの基本的なコンセプトは以下の3点。

  • クラブという環境で
  • お酒などを飲みながら
  • ひらすら現代音楽を聴く(私語オーケー)

以上! とても単純でしょう? このイベントでは毎回テーマ作曲家を選び、テーマに従って選曲がおこなわれます。第一回目のテーマ作曲家は「カールハインツ・シュトックハウゼンです。ジャズやロックやクラブ・ミュージックにも影響を与えたドイツ生まれのこの大作曲家は「影響を与えた」と語られるばかりで、実際にはほとんど理解がされていない、というのが現状でしょう。最も有名なのに最も誤解された作曲家のひとりとして、没後4周年となる全くキリの悪い年、2011年にシュトックハウゼンを取り上げます。選曲は日本が誇るシュトックハウゼンのエキスパートである声楽家、松平敬さんに依頼、快諾していただきました! イベントは、音楽だけにとどまらず松平さんからシュトックハウゼンについての貴重なお話もうかがう、という「講習会」に相応しい内容となる予定です!!


気になる開催日は2011/07/17(日)!! 次の日は海の日でお休み、かつ18時スタートで22時30分には終了する、夜更かしが苦手な方にも優しい設定です。開催場所は、三軒茶屋Hell's Bar(http://www.go-to-hell.jp/)。料金は1500円です(ノー・ドリンク)。


とりあえず、今回出せる情報はここまで。問い合わせはdmitryshostakovich@gmail.com か Twitterの@mk_sekibang までお願いします。

  • 関連

http://matsudaira-takashi.jp/index.html

  • 追記 フライヤーができました。

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追記 http://d.hatena.ne.jp/Geheimagent/20110630/p1