sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

『機動戦士Zガンダム』を観おえました

 「http://d.hatena.ne.jp/Geheimagent/20100605/p1」から約2ヶ月、シリーズ全50話を観おえました。昨年は『聖戦士ダンバイン』を全部観たんですけれど、それとは段違いの充実感。面白かったなあ……。これもひとつの鬱エンディングなのでしょうがダンバインがマジで救われないエンディング(『親父、涅槃で待つ』っつーか『来世でまた会おう』的な)だったのに対して、カミーユが廃人になるというエンディングは「人類がわかりあえる未来」のために殉教したかのようで希望が残されている(ラスト2話は普通に感動してしまいました)。


 ただし、その「わかりあえる未来」がどのようなものなのだろうか、とも考えてしまうのです。このわかりあえる状況は、最終話でカツ・コバヤシの魂とサラ・ザビアロフの魂が語ったところで示唆されているのですが、まるでユートピア、あるいは人類補完計画的なもののようにも思われます。富野由悠季は近年ハンナ・アレントを読んで非常に共感した、ということを語っていましたが*1アレントが理想とする古代ギリシャ都市国家における共和制はカミーユシャア・アズナブルが理想とする世界(それはコミュニケーションによって接続される社会……というとルーマンみたいですが)と重ねられるでしょう。


 しかし、その理想はロマンティックなものであり、シロッコハマーンといった端から民衆といったものを「俗物」「愚民」としか思っていない超エリートには到底受け入れられない。こうしてシロッコハマーン全体主義的な社会の構築を目指す。ここで一旦整理しておきますと、共和制/全体主義の対立があるわけですね。で、シロッコハマーンという全体主義者同士のあいだにも方法論の違いにより対立がある。どちらも「人間がそんなに賢くなるわけない、だから管理する人間が必要だ」というなんかアリストテレスの理想国家みたいな感じを目指しているんだけれど、ハマーンはその管理はザビ家によっておこなわれるべきと考えていて*2、一方シロッコは「女の時代がくる」とか言っている。

 個人的にはシロッコという男がよくわからなくて気になりました。「木星帰りの男」で、とにかく「天才」っつーことはわかるんですが、ホントに結婚詐欺師みたいな男なんですよ。「女の時代がくる」とかフェミっぽい発言をしつつも、女を道具みたいにしか扱っていない。「このぬくもりが欲しかったのだろう」とか言いながら女を抱擁して、自分の理想のために働かせる。で、そのぬくもりに女がまた動かされちゃうんだよね……。まるでシャブを打って女をソープで働かせる男みたいで最高だな! と思ったんですが、こうした天誅でも与えられるべき女性の扱いをすることで、世界を自らの手におさめようとするのか……と思いきや「私は歴史の立会人」と称していて実権を握りたいわけではないらしい……。一体、何がしたいのだ、と。


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 後半はシャアが結構ひどい目にあったりするんですが、そのひどい目のあいっぷりが全部過去の女がらみの清算のように思えて「ざまあみろ!」とも思いました。ホントに業が深い男である。カミーユファム・ファタルっぽい女と別れてしまうと、すぐに幼馴染の女の子に手を出したりして、女の敵(っつーか幼馴染のコ、都合が良い女すぎる!)みたいですし、付き合ってる女が全員死亡するジェリドというヤツもいて、業が深い男が多いのかも。


 写真は、気分が高まって10年以上ぶりに手を出したガンプラ。素組でもカッコ良くて、最近のプラモデルはすげえなあ、と思ったよ。次はガブスレイを作りたい。

*1:ガンダムは作品ではなく“コンセプト”――富野由悠季氏、アニメを語る(後編) (4/4) - ITmedia ビジネスオンライン

*2:なぜ、ハマーンがザビ家再興にこだわるのか、よくわからないのですが、これは元カレであったシャアへのあてつけなのでしょうか……